BMIは「問題」米国医師会が勧告 200年前の指標、見直しのわけ

健康診断の結果、「肥満」の疑いが――。しかし、肥満の判定の根拠としてよく使われるBMIには長年、「不完全」という指摘があります。そして先日、米国医師会がBMIの使用に「問題がある」と勧告。さらには「人種差別的」とも認めたのです。BMIを巡って、世界で何が起きているのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)


実は2世紀前に開発された

健康診断の結果で「肥満」の疑いとされ、ショック――。でも、もしかするとその内容によっては、一喜一憂しなくていいことかもしれません。

健康診断の結果で「肥満」の疑いなどとされるとき、その基準の一つになるのが体格指数(BMI)です。厚生労働省によれば、BMIは国際的に用いられる肥満度を表す指標で、体重(kg)÷身長(m)の二乗で求められます。

計算方法は世界共通ですが、肥満の判定基準は国によって異なります。WHO(世界保健機構)の基準では30以上がObese(肥満)です。日本肥満学会の定めた基準では18.5未満が低体重(やせ)、18.5以上25未満が普通体重、25以上が肥満で、肥満はその度合いによってさらに1から4までの段階に分類されます。

BMIが22になるときの体重が「標準体重」。もっとも病気になりにくい状態であるとされています。25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが倍以上になり、30を超えると高度な肥満として、より積極的な減量治療を要するものとされています。

そんなBMIについて、米国医師会(AMA)が肥満の基準としては「問題がある」と勧告したことが世界的に話題になりました。

【参考】Medical Group Says B.M.I. Alone Is Not Enough to Assess Health and Weight - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/06/15/well/live/bmi-health-weight-ama.html
【参考】Doctors urged to move beyond BMI alone as a health measure - CNN
https://edition.cnn.com/2023/06/19/health/bmi-doctors-health-measure-wellness/index.html
【参考】Why Are People Fighting Over BMI? Conservatives Call Doctors’ Group ‘Woke’ For Questioning Obesity Measure - Forbes
https://www.forbes.com/sites/conormurray/2023/06/21/why-are-people-fighting-over-bmi-conservatives-call-doctors-group-woke-for-questioning-obesity-measure/?sh=56eeea8b4224

そもそも、BMIは19世紀にベルギーの統計学者ケトレーが発案したもの。総務省統計局はケトレーがこれを1835年に開発、「人の身長に対する理想的体重を調べ、実際の体重と比較する指数」と説明しています。

約200年前に開発されたこの指標は、長らく、下記に紹介するような問題点も指摘されていました。そして近年、その見直しが進んでおり、今回のAMAの勧告はそれを後押しするものと言えるのです。


なぜ「人種差別的」批判?

今回、話題になったのは、BMIの問題の歴史を評価し、代替案を検討するAMA科学公衆衛生評議会の報告書(※1)の一部。

※1. AMA adopts new policy clarifying role of BMI as a measure in medicine
https://www.ama-assn.org/press-center/press-releases/ama-adopts-new-policy-clarifying-role-bmi-measure-medicine

そこで指摘されたのは、BMIは「人種/民族グループ、性別、ジェンダー、年齢層間の違いを考慮していない」という点でした。

例えば、BMIはもともと「主に前世代の非ヒスパニック系白人集団から収集されたデータ」に基づいており、「平均的な男性の体格」を明らかにするためのもの。これを世界中のさまざまな人々に一律に適用して肥満かどうかを判定してきたため、BMIは「人種差別的である」とも批判されてきました。

今回の勧告で、AMAはBMIが人種差別的に使用されてきたことを、「認識している」と表明。

AMAは「BMIは一般集団の脂肪量と有意な相関があるが、個人レベルに適用すると予測可能性が失われる」「肥満の基準としてBMIを適用する際には、人種/民族グループ、性別、ジェンダー、年齢などによる相対的な体型と組成の違いを考慮しなければならない」としました。

その上でAMA は、BMIを内臓脂肪、体脂肪率、体組成の測定、腹囲、遺伝的/代謝的要因など、その他の有効なリスクの基準と組み合わせて使用することを提案しています。 AMAの勧告は強制力のあるものではありませんが、AMA自体は同国内で医師に対する影響力の大きい組織です。

AMA前会長...

詳細はサイトで
https://withnews.jp/article/f0230711002qq000000000000000W0bx10701qq000025935A