https://anime.eiga.com/news/column/animehack_editors/119076/
タイトルは2017年刊行の漫画版がベストセラーになった吉野源三郎氏の小説「君たちはどう生きるか」(1937年発表)から採られていますが、物語は宮崎監督による完全オリジナル。ジブリ作品の歴史がつづられた新書「スタジオジブリ物語」(集英社刊)によれば、作中の人物がこの小説を読んでいるという設定があるだけで、作品の中身は小説とはまったく無関係だそうです。スタジオジブリの公式サイトでは18年1月に制作中の同作を「冒険活劇ファンタジー」と紹介しています。

「スタジオジブリ物語」では、「君たちはどう生きるか」の物語に大きな影響を与えた海外の児童文学が書名をふせて挙げられています。「風立ちぬ」の公開後、長編制作から引退した宮崎監督が鈴木プロデューサーに勧め、両者とも長編映画化するのにふさわしいと考えたものの、原作のままでは映画にならないと判断したため同書を原作にはせず、日本を舞台にしたオリジナル作品として企画書がつくられました。

宮崎監督が刺激をうけたこの作品は「アイルランド人が書いた児童文学」と紹介されていて、おそらくジョン・コナリー氏の「失われたものたちの本」だと思われます。コナリー氏はアイルランド生まれで、東京創元社から刊行された同作の文庫の帯には宮崎監督が「ぼくをしあわせにしてくれた本です。出会えてほんとうに良かったと思ってます。」と推薦文を寄せているからです。「失われたものたちの本」は、本のささやきが聞こえるようになった12歳の少年が物語の世界に迷いこみ、もとの世界にもどるため旅する異世界冒険譚で、「君たちはどう生きるか」の「冒険活劇ファンタジー」とも符合します。

【スタジオジブリ単独出資】

「君たちはどう生きるか」は、スタジオジブリの単独出資で製作されています。ディズニー傘下になる前のルーカスフィルムによる「スター・ウォーズ」シリーズ、庵野秀明監督が代表を務めるカラーによる「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズと同じ方式で、これまでのジブリ作品で採られていた複数の企業が出資する製作員会方式ではなく、ジブリが多くの責任を担う単独出資だからこそ、ここまで思いきった施策がとれているのだと思われます。

鈴木プロデューサーは「週刊文春CINEMA」のインタビューで、「自社で製作費をまかなうということはですね……赤字になったっていいわけですよ(笑)」「今回は本当の博打です」と語っています。

【音楽は宮崎作品おなじみの久石譲。主題歌もあり