昨今、損保会社の払い渋りの傾向が強く、たとえば修理代の見積もりが30万円と出ても、アジャスターの力で15万円程度まで下げられるような状態が続いており、最近では「アジャスター」はできるだけ修理代を低く見積もるのが仕事になっている。しかし、ビッグモーターに対してはこれが当てはまらなかった。

ビッグモーターで数年前まで板金部門の責任者だったAさんは以下のように教えてくれた。

「契約者が損保ジャパンをはじめ特定の保険会社の場合、アジャスターの立ち合いはもちろん、協定すらなくビッグモーターの言うままに修理金額が決まっていました。損保ジャパン、共栄火災の損保2社については一番甘く、案件によっては50万円を超えても立ち合いがありませんでした。

三井住友と東京海上は見積もり金額によって対応が必ずしも決まっているわけではなく、ケースバイケースでした。たとえば、修理代50万円の見積もりの場合でも画像のみで終わるときもあれば、30万円でもアジャスターの立ち合いが来るときもありました。損傷が分かりにくい、前回りの見えない部分が多い案件は立ち合いをしていた印象です。

あいおいは修理代15万円以上になれば、全件立ち合いでした。損保の会社によって基準はまちまちでしたが、お客様が車を確認してくれという案件に対しては、金額や損傷関係なく、損保ジャパンと共栄火災の2社も含めて全件立ち合いをしていました」

損保ジャパンや共栄火災のように、ビッグモーターの言うままに水増しした見積もりを認めてくれる保険会社には特別なご褒美が用意されていた。それが、先ほどの繰り返しになるが、入庫をビッグモーターに誘導してくれた保険会社と、1件につき5台分の自賠責保険をその保険会社と契約することだった。

車の所有者は、定期的に行う車検のときに自賠責保険の契約を義務付けられている。24ヵ月で17000円程度と安価ではあるが、車の所有者全員必須の契約だ。車検台数が年間26万台のビッグモーターでは車検時に発行する自賠責保険だけでも年間約45億円になる。

前出のビッグモーターの関係者の話で、少なくとも自賠責保険を取り扱う損保5社と関係していたことが分かるが、その風向きが変わったのは、今からちょうど1年ほど前の7月中旬。ビッグモーターの全国の店舗や直営板金工場にこのような通達が行われた。

7月14日付で出されたこのメールには以下のような記述がある。
<7月の自賠責発行依頼になります。
今月につきましては今日以降、
・東京海上
・三井住友
上記2社に関しては発行をストップして…>

つまりビッグモーターとメインでやり取りしていた3社のうち、東京海上と三井住友の2社に対しては2022年7月14日以降、自賠責保険の契約をストップするよう、指示したものと考えて間違いなさそうだ。なぜそうなったのか。

https://news.yahoo.co.jp/articles/38572515a7f942fe3cc7061e87a944af102a4bc0?page=1