他の南欧の観光地も、うだるような猛暑が続いている。今週はローマで40度超を観測したほか、多くの国で平年を大幅に上回る気温となった。ギリシャでは2021年時点で観光業が国内総生産(GDP)の14%以上を占めており、旅行者が欧州北部へと行き先を変更すれば、甚大な影響を受けることとなる。

一方、英国では、ジェット気流の影響で大西洋から吹き込む涼しい風が、欧州の熱波から沿岸部を守っている。南部ブライトンの海岸は気温22度と比較的穏やかな天候で、行楽客の姿が引きも切らない。

欧州旅行委員会は、今夏の地中海地域への旅行予約は10%減少したと発表した。今後さらに多くの人が、過ごしやすい英国のビーチや欧州北部の国々へ向かうとみられる。

実際、イングランド南岸の避暑地は今年、どこも大勢の旅行者でにぎわっている。かつて英国王ジョージ5世お気に入りの保養地だったボグナーリージスなどは、1930年代以降はすっかり衰退してしまっていたが、今年は予約が100%増加した。

この状況は、欧州北部の国々にとって有利に働くように思えるかもしれない。だが、このような観光客の大量流入は、深刻な問題を引き起こす恐れがある。まず、インフラは対応できるのか、ホテルの部屋や列車・航空機の座席は足りるのか。また、設備を増設する場合は、環境に配慮する必要がある。英国の下水道は何百年も前に建設されたものだし、線路は老朽化しているため、今や気温27度以上では列車を運行できない。

英国のワインは気候変動のおかげで味が年々着実に向上しており、より多くの観光客を誘致する資源となるだろう。しかし、気温の上昇は同時に、西ナイルウイルスを媒介する蚊の北上や、火災・干ばつの脅威の増加など、観光客が気を付けなくてはならない新たな健康問題を生むだろう。それに、英国にはエアコンが標準装備されていない建物が多い。

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