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読書感想文・自由研究は任意で、一律の課題を廃止…変わる「夏休みの宿題」
小学校の夏休みの宿題が変わってきている。自由研究や読書感想文、絵画、復習用ドリルなど、記者（38）の子ども時代には全員に課されていたものが、任意になったり、姿を消したりしているという。なぜなのだろう。
「こんなに少ないのか」
大阪府高槻市の男性会社員（41）は、市立小学校1年生の長男の夏休みの宿題を見て驚いた。算数と国語のプリントが計20枚と、タブレット端末で取り組むドリルが主で、読書感想文や自由研究は任意だったからだ。
学校の説明によると、共働きの親が増え、宿題を見る負担が大きいとの声が上がったためだという。男性は「妻も働いており、自由研究の手伝いなどに不安があった。よかった」と胸をなで下ろす。
近年、宿題の量を減らしたり、一律に課したりするのをやめる学校が増えている。
東京都の品川区立山中小学校では、今年度から夏休みの宿題を自由研究と絵日記、朝顔の観察（1年生のみ）だけにした。去年まではこれらに加え、復習ドリルや漢字の書き取り、読書感想文があった。
変更を先導したのは校長の守田由紀子さんだ。「主体的な学びが大事と言いつつ、一律の宿題を課すことに疑問があった。嫌々やる宿題よりも、子ども自身が何をやるか決めて、家庭で取り組む方が有意義だと思った」と話す。
岐阜市立岐阜小学校では、昨年度から普段の日の宿題を廃止し、子どもが自ら決めて学ぶ家庭学習に改めた。夏休みの宿題も復習問題と休みの過ごし方などをまとめた「夏の友」と「宝物づくり」のみだ。宝物は、工作や実験、旅の思い出など、何でもいい。
5年生の栗山晶子さん（11）は、「前より勉強がおもしろい。今年はどんな『宝物』に取り組むか、友達と話すのも楽しい」と笑う。母親の温子さん（41）は、「1、2年生のときは、声をかけないと宿題がなかなか進まなかったが、最近は自分で決めて楽しそうに学んでいる」と喜ぶ。
校長の藤田忠久さんは、「夏休みは子どもたちを家庭にかえす時期。この期間にしかできないことに夢中で取り組んでほしい」と話す。
内容を子どもや家庭に自由に決めさせることで、その子に合った課題に取り組めたり、興味関心を伸ばしたりできる利点がある一方で、不安を感じる親も。小学5年生の子がいる東京都内の男性（38）は、「勉強量が不足している気がして、何冊もドリルを与えている」と明かす。
こうした親らに応えようと、千葉県内の小学校では夏休み前の保護者面談で、学習面の課題や家庭学習に向けた助言などを丁寧に行う。
教育評論家の親野智可等（ちから）さん（65）は、「今後の社会では、自分でやりたいことを見つけて追求する能力が求められる。夏休みは、多様な体験を通して興味がある分野を見つけるのに最適な時期」と、宿題の改革を歓迎する。一方で、多くの宿題を課す学校もあるといい、「子どもによっては、負担が大きい場合もある。そんな時は、学校に相談するなどして、有意義な夏休みにしてほしい」と話す。
大正時代に既に存在
99年前の夏休みに宿題として出された「夏休の練習」。休み中の心得や復習の仕方なども記されている
昔も夏休みの宿題はあったようだ。東京都公文書館で、99年前の大正13年（1924年）の夏休みの宿題を見つけた。東京府（当時）が、文部省（同）からの要請を受けて、いくつかの小学校の宿題を調べた際の報告書に残されていた。
八王子市第三尋常小学校では、「夏休の練習」という、いわゆるドリルが出されていたようだ。冒頭には、「毎日、時間を定めて涼しい間に復習しなさい」と、勉強の心得も書かれている。
青山学院大学特任教授の木村元さん（教育史）は、「教科書が配布され、家庭に紙や鉛筆などが普及し、この頃には夏休みの宿題が全国に広がる基盤ができあがっていた」と説明。高度経済成長期には、「知識詰め込み型」教育を背景に宿題の量が増え、90年代以降は自由研究などの「探究型」学習が広がった。「宿題も社会とともに変わってきた。親子など、世代の違う人たちで自分の取り組んだ宿題について話すのも楽しいですよ」と話していた。
