《ジブリ“大型移籍”の真相》『君たちはどう生きるか』作画監督が初めて明かした宮ア駿との制作現場
 7月14日、宮ア駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』が公開された。宮ア氏が引退宣言をした前作『風立ちぬ』以来、10年ぶりの長編で、公開17日間で興行収入は46億円を突破。事前に公開された作品情報は「ポスター1枚」のみという、異例のマーケティングが注目を集めた格好だ。

 月刊「文藝春秋」は、『君たちはどう生きるか』で作画監督を務めた本田雄氏(55)に制作の舞台裏を独占インタビュー。およそ2時間に渡り、本田氏が語りつくした「宮ア駿監督との真剣勝負」が8月10日(木)発売の2023年9月号、および「文藝春秋 電子版」(8月9日公開)に掲載される。

『僕にとっては最後の作品になるかも知れない』と言われると断れない
 本田氏は、庵野秀明監督の「エヴァンゲリオン」シリーズを担当してきた名うてのアニメーターだ。今回、庵野氏率いるアニメ制作会社カラーからスタジオジブリへの“移籍”については、まず最初に、宮ア駿監督から2016年の夏に打診があったことを本田氏は明かしている。当時、本田氏はジブリ美術館でかける短編『毛虫のボロ』の制作中で、作画監督として宮ア監督とともに仕事をしていた。

「宮アさんに誘われたときは即決ができなくて、『ちょっと持ち帰らせてください』と答えました。当時の僕は庵野さん率いるカラーの社員でしたし。

 ところが、宮アさんは『僕にはもう時間が無いんです』と追い討ちをかけてくる。そのとき宮アさんは75歳だったんですが、『宮ア家は長寿の家系ではなく、80歳の壁を超えた人はいないんです』と。お父さんは79歳で亡くなっていて、お兄さんは77歳で他界された。『僕にとっては最後の作品になるかも知れない』と言う。ずるいですよ、宮ア駿にそう言われて断ることができるアニメーターはいない(笑)」

やりたい仕事か、やらなきゃいけない仕事か
 しかし、本田氏は最初のテレビアニメ版から20年以上も、「エヴァンゲリオン」シリーズに携わってきた。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と『君たちはどう生きるか』のどちらに参加するか。悩んだ本田氏はその年の12月まで結論を出すことができなかったという。そこに、スタジオジブリ社長の鈴木敏夫が姿を現した。

「なかなか答えを出せないでいると、2016年の年末、12月30日だったと思いますが、鈴木さんに呼び出されて、吉祥寺にある喫茶店で話をすることになりました。

 さすがに何らかの返事をしなければまずいので、僕は正直に『《君たち》と《シン・エヴァ》、両方ともやりたい』と伝えたんです。が、鈴木さんもなかなか譲ってくれない。『本田君、仕事っていうのは、二つしかない。やりたい仕事か、やらなきゃいけない仕事か、ですよ』なんて言う。結局、お前はどっちがやりたいんだと」

 なぜ『シン・エヴァンゲリオン劇場版』ではなく、『君たちはどう生きるか』を選んだのか。なぜカラーからスタジオジブリへと移籍したのか。そして、宮ア駿監督と机を並べた6年に渡る制作はいかなるものだったのか?

 本田氏が今作について初めてインタビューに答え、巨匠・宮ア監督との“真剣勝負”の日々を振り返った。 

 アニメ業界を揺るがした“大型移籍”の舞台裏、そして『君たちはどう生きるか』の制作プロセスを明かした、本田氏による「宮ア駿監督との真剣勝負」は、「文藝春秋」2023年9月号(8月10日発売、「文藝春秋 電子版」では8月9日公開)に、10ページにわたり掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2023年9月号)

https://article.auone.jp/detail/1/2/4/136_4_r_20230809_1691547123660639

本田雄の作画集
https://www.youtube.com/watch?v=QMUe5Vkh1K0

本田雄がジブリ映画で始めて担当したパート(ゲド戦記)
https://www.sakugabooru.com/data/a318e530282bab5c4ecb84d7f6f7cefd.mp4