ウクライナで徴兵逃れ続出、国境では毎日偽装出国者を拘束

ウクライナがロシア軍への大規模な反転攻勢に必要となる兵員を確保するために総動員体制を強化したことで、徴兵逃れが相次いでいる。偽装出国や徴兵担当者の汚職が広がっており、政府は徴兵対象の規則を変更して取り締まりを強化している。

ウクライナ政府は開戦直後の昨年2月、総動員令で18~60歳の男性の出国を原則として禁じた。当初は愛国主義者らが大挙して軍に志願したが、反転攻勢に向けた兵員の確保が急務となり、今年4月に徴兵規則を変更した。

地方在住者が主要な対象だった制度は廃止され、都市部の住民にも徴兵が拡大された。企業にノルマを課し、社員を動員させる仕組みも導入した。住民票の登録地と違う場所に住んで招集令状の受領を逃れる市民の摘発を目的として、街角で「動員状態」を尋ねる点検も行っている。

「死ぬ覚悟ない」

 一方で増えているのが徴兵逃れだ。30歳代のITコンサルタントの男性は昨年冬にウクライナを出国し、欧州に滞在している。知人を介して密出国業者に「4桁の米ドル(1000ドル=約14万円以上)」を渡し、ボランティア名目で出国許可の書類を入手した。期限はすぎたが、帰国するつもりはない。

 男性は出国直前の昨秋以降、死を身近に感じるようになったという。同僚2人が露軍のドローン攻撃などで死亡し、親友が徴兵されて前線に赴いた。「心も魂も友人も思い出もすべてウクライナにある。だが、国のために死ぬ覚悟があるかと問われれば、答えはノーだ。命より大切なものはない」と吐露した。

https://www.yomiuri.co.jp/world/20230821-OYT1T50021/