「芸備線の備中神代駅(岡山県新見市)から備後庄原駅(広島県庄原市)までの区間は、全国でも非常に利用が少ない。
10月1日に法律(改正地域交通活性化再生法)が施行されたらできるだけ速やかに
(再構築協議会の設置)要請をして、存続ありきか廃止ありきかのいずれでもなく、まちづくりの中で地域の交通をどうしていくのか、地域の人と議論したい」。
JR西日本の須々木淳・地域共生部次長は8月2日に芸備線の沿線自治体との会議に臨んだ後、こう表明した。

岡山県と広島県を結ぶ芸備線の中でも、上記の区間に含まれる東城駅(広島県庄原市)〜備後落合駅(同)の間は、輸送密度(1km当たり1日平均旅客輸送人員のこと。
平均通過人員ともいう)が13人(2021年度)と全国で最も低い。収支も億単位の赤字を計上している。JR西は21年6月に沿線自治体に申し入れ、検討会議を何度も開いてきた。
地元の要望を受けて列車増発の実証実験も行ったが、観光客の多い週末の利用客は増えたものの、平日の日常的な利用は増えなかった。
(参考記事「100円稼ぐのに経費が2万6906円、赤字にあえぐJRローカル線」)

すでに沿線自治体との検討会議があるにもかかわらず、JR西が再構築協議会の設置を要請するのはなぜか。それは沿線自治体側が「存続ありき」の姿勢を崩さず、
利用促進策以外の検討を拒んでいるからだ。これに対して国が必要性を認めれば設置される再構築協議会は、地域公共交通のあり方について、廃線という選択肢も含めて議論する場。
JRが要請して国が認めれば、沿線自治体も議論のテーブルに着かざるを得なくなるのだ。

設置要件は明文化されていないものの、国土交通省の有識者会議の提言では、平常時の輸送密度が1000人未満で、2つの都道府県にまたがり、特急列車や貨物列車が走っていない線区が候補になっている。

JR西に限らず、JR東日本、JR四国、JR九州も赤字ローカル線の存廃、あるいは災害で運休中の路線を復旧すべきかどうかを議論したいと表明している。
いずれの線区も輸送密度は2〜3ケタにとどまり、年間で億単位の赤字を出している。経済合理性だけで判断すれば、存続は極めて厳しい。
完全民営化され、一般株主に対する経営責任を負っているJR東、JR西、JR九州は特にそうだ。一方で、沿線住民を中心に歴史ある鉄道を残したいという意識は根強い。
もしどうしても鉄道を残したいとなれば、議論は巨額の赤字を誰がどれだけ負担するのかという点に行き着く。

https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00148/082300119/