「お父さんやめて、痛い、痛い!」と泣き叫ぶ小学生の娘…あらゆる音を知り尽くす“音声解析のプロ”を絶望させた「この世で一番むごい音」

なぜ音声解析を始めたのか

そもそも村岡さんはなぜ音声解析の仕事を始めたのか。その可能性に気づいたのは、ひょんなことからだった。大学で音響工学を学んだ村岡さんは、卒業後には音楽関係の仕事をスタート。その時に偶然出会ったのが、古いカセットテープをなんとか復元したいと思っていた70代の女性だった。

「そのテープに収録されていたのは、かつて女性がハワイの現地で録音してきた思い出のハワイアンソング。ノイズまみれになってしまったそのテープを、どうにかしてCDにして欲しいと頼まれたのです。

昔からノイズの除去はよくやっていたので、復元するのは簡単でした。ただ、予想外だったのが女性の反応です。蘇ったテープを渡したらその方が泣いて喜んでくれまして。彼女にとってはそれほど貴重な音だったんでしょうね」

この分野に強い興味を覚えた村岡さんは、それからまもなく千葉音声研究所を立ち上げる。しかし、単に解析技術が高いだけでは、この特異な業界では信用してもらえない。現在、千葉音声研究所が警察や弁護士からの解析依頼も多くこなすことができるのには、村岡さんの特別なスキルが大きく関係している。

「実は、父が法医学者だったんです。音声解析の仕事を始めると言ったら、正確な鑑定書を作成する技術、それから警察や裁判時の対応など、解析以外に必要な仕事のイロハをすべて叩き込んでくれました。振り返ってみると、僕がこの道を選んだのは、同じく鑑定を仕事にしていた親父の影響もあるかもしれませんね」

千葉音声研究所をスタートさせて以来、殺人事件やパワハラ、セクハラといった悲惨なシチュエーションの音声を嫌と言うほど耳に浴びてきた村岡さんだが、今ではすっかり感情移入をしなくなったという。しかし、ひとつだけ、いまだにどうしても慣れない音がある。

最初にその音を聞いたのは、まさに研究所を立ち上げた直後。依頼者は小学生の女の子を持つ母親だった。

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