米陸軍がSEPv4中止とM1E3開発を発表、初期作戦能力は2030年代初頭

米陸軍は「エイブラムスのSEPv4開発を中止して“より積極的なアップグレード=M1E3”を開発する」と発表、この新しいエイブラムスはSEPv4の特徴を取り入れつつ「モジュラー式のオープンアーキテクチャ」を採用し、2030年代初頭に初期作戦能力を獲得する予定だ。

エイブラムを運用する同盟国や新たに導入する同盟国にとっては歓迎すべき決定だと言える
米陸軍はエイブラムス、ブラッドレー、M113の後継車輌、歩兵旅団戦闘団向けの火力支援車輌、地上無人車輌を対象にしたプログラム「Next Generation Combat Vehicle(NGCV)」を進めており、
M113の後継車輌としてAMPVを約2,900輌調達、歩兵旅団戦闘団向けの火力支援車輌としてM10 Bookerを約500輌調達する予定で、ブラッドレーの後継車輌は現在開発中、無人戦闘車輌(RCV)も間もなく開発契約を締結する予定だ。

エイブラムスの後継車輌に関しては要求要件が未定で、ジェネラル・ダイナミクスが提案した「AbramsX」も米陸軍のプログラムではなく同社のデモンストレーターに過ぎず、
エイブラムスの新しいアップグレード=SEPv4の開発も進められているため「開発が本格化するのは2020年代後半になる」と言われてきたが、米陸軍は「SEPv4の開発中止」と「より積極的なアップグレードの開発」を発表して注目を集めている。

米陸軍のジェフリー・ノーマン准将は6日「最近の戦争を研究する過程で『将来の戦場が戦車に新たな課題を突きつけている』と理解しており、我々はエイブラムスの機動性と生存性を最適化し、将来の戦場でも機能できるようにしなければならない。
しかしエイブラムスは重量を増やすことなく能力を強化するのが難しく兵站への負担も削減しなければならず、ウクライナでの戦争は兵士の包括的な保護の必要性も浮き彫りにした」と述べ、SEPv4の開発中止して「より積極的なアップグレード=M1E3の開発」を発表した。

Eという名称は「簡易な修正よりも重要な技術的変更」を意味し、M1E3はSEPv4の特徴を取り入れつつ「モジュラー式のオープンアーキテクチャ」を採用する計画で、これに成功すれば迅速な技術的アップグレードが少ないリソースで可能になり、将来的には「より生存性の高い軽量戦車の設計ができるようになる」と述べているのが興味深い。

エイブラムスへの能力追加は重量増=機動性の低下と兵站の負担増で成立しており、54トンだった初期重量はSEPv3で66.8トンに到達、GDLSは「SEPv4で追加される新技術は重量をさらに押し上げる」と言及しているが、
ウクライナでの教訓から戦車の保護能力を更に高める必要があると判明したため「能力を継ぎ足すのではなく抜本的な改良が必要」と判断し、SEPv4ではなくM1E3の開発を決断したのだろう。

因みにM1E3には2040年以降の拡張性の確保する改良要素も盛り込まれており、M1E3の初期作戦能力は2030年代初頭に獲得予定で、米陸軍は「M1E3の生産が始まるまでSEPv3の生産を縮小する」と述べてため、M1E3の運用期間は最低でも15年以上になる見込みだ。

つまり「既存のインフラを完全に捨てる新設計の戦車開発は先送りされる=スペアパーツの入手性に直結する生産ラインが今後何十年も維持される」という意味で、エイブラムを運用する同盟国や新たに導入する同盟国にとっては歓迎すべき決定なのかもしれない。

https://grandfleet.info/us-related/us-army-announces-discontinuation-of-sepv4-and-development-of-m1e3/