私も外国では現地のルール、いわゆる「ローカルルール」に毎度驚かされてきた。特に道路には、その地域の住民性みたいなのが顕著に表れる。

 かつて住んでいたアメリカのニューヨークでは、「信号守ってたら周りの邪魔になるし、道路上でボーっと突っ立ってたら別の事故に巻き込まれる」と、歩行者が赤信号をガンガン横断する。

 ベトナムの首都ホーチミンでは、「一家4人乗りバイク(うち子ども2人)」がバンバン走り、その波間を縫うようにして歩行者が道を横断。はたまたお隣韓国の都心部では、社会問題になっている「歩きスマホ」の歩行者たちが信号無視して事故に巻き込まれぬよう、地面に信号を設置する動きがある。

 さらに、多くの国ではタクシードライバーは私服で、客を乗せているにもかかわらず、電話で妻とその日の晩御飯の相談なんか始めるドライバーも少なくない。

 このように、世界には日本では考えられない光景が当たり前のように広がっている。

 これは裏を返せば、日本の道路で起きていることも、時に外国人からは摩訶不思議な行動に見えることを意味するのだが、ローマンさんのYouTubeや本書は、その「日本の不思議」に気付かせてくれるのだ。

その「日本の道路上の不思議」のなかでも代表的なのが「マナー意識の高さ」だ。日本にいるとよく分からないかもしれないが、日本の道路上におけるマナー意識は世界的に見ても非常に高い。

 特に「ドライバー同士の挨拶」においては、来日間もない外国人にとってはまさにカルチャーショックだろう。

 道を譲ってもらった際、小さくクラクションを鳴らすや否や、手を上げハンドルにおでこつくほどお辞儀し、その後合流が完了するといつもサンキューハザード5回点滅「アリガトウ」のサインで締める、というドライバーまでいるんだから。

 鉄の塊で遮断された者同士、こうして互いにコミュニケーションを取り、積極的に礼を伝えようとする行為は素晴らしいことだ。が、こうしたマナーや礼儀は美しい反面、やりすぎてむしろトラブルや事故を誘発することにもつながることもある。

 道を譲った際に礼のないドライバーに対して逆上し、煽り行為に発展するケースは過去に少なくない。また、バスドライバーには、同じ会社のバスがすれ違う際は手を上げ挨拶することが通例となっているが、結果その挨拶に気を取られ、交通事故を起こしてしまった例もある。

 このように、マナー意識の高さがゆえに、そのマナーが次第に「ルール化」することによってトラブルが起きやすくなる、というのが日本の道路の特徴なんだろうなと、この仕事を通して毎度感じるのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/365daa6ceaea25501a2723f975f483f142f81fa6