マンションの隣人死亡 その部屋の処分代 あなたは払えますか?

入居者が毎月納めるはずの管理費や修繕積立金の滞納が続いている部屋があり、その額が50万円以上にも上っていることに気付いたのです。
調べてみると、入居者は8年前に病院で死亡。相続は親族によって放棄されていました。
つまり、部屋はそのまま放置され、引き取り手がいない状態です。

さらにその後の調査で、亡くなった入居者が固定資産税も滞納していたことが判明。
「資産」ではなく「負債」が見つかる結果になりましたが、その負債を引き受ける相続人はいません。

このまま放置し続ければ部屋はさらに傷み、管理費の滞納も続くことになる。
しかたなく、管理組合では、マンションの住人でお金を負担して部屋を元の状態に戻すことを決めました。
マンション全体のためにはやむなし、と判断したのです。

そのうえで、亡くなった入居者が滞納していた固定資産税までも、ほかの住人たちで負担することになりました。

「踏んだり蹴ったりですよ。こんなのはおかしいじゃないですか」

佐藤さんはたまらず訴えましたが、弁護士の答えはこうでした。

「不満はよく分かります。本当にそのとおりです。しかし負担いただかなければ部屋は自治体に差し押さえられます。
今の制度では、この部屋を住める状態に戻すには、皆様に未納の税金を負担いただくしかないのです」
結局、“遺品部屋”を元の状態に戻すためにかかった時間は3年ほど。数百万のお金を費やすことになりました。

こうした状況で支援してくれるような制度はないのか必死に探しましたが、見つかりませんでした。

入居者の中には、日中はなるべく明かりをつけずに電気代を節約してきた女性や、
夏場の暑さの中でエアコンの使用を控える年金暮らしの高齢者もいます。
取材した入居者の1人は「値上げはしかたない」と受け入れつつも「物価高も続く中で、正直、痛いです」と話していました。

そうした入居者たちの実情も分かった上でなお、値上げは必要だと決断した佐藤さん。
国には、所有者や相続人が不明の部屋が出た場合の住人の負担を減らす仕組みを整えてほしいと話します。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230908/k10014186531000.html