東京都心の光ファイバーで「量子もつれ状態の光子」を16km先に伝送--ソフトバンクとLQUOM
https://news.yahoo.co.jp/articles/779d203b6e4eba59bafa9818faee0bcca9a944c8

 ソフトバンクとLQUOM(横浜市)は9月21日、量子インターネットの実現に向けた実証実験を共同で実施すると発表した。東京都心部に敷設された約16kmの光ファイバーを用い、量子通信のキー技術である「量子もつれ」の安定性などを確かめる。

 量子通信とは、量子力学における「量子もつれ」(エンタングルメント)など、量子力学特有の現象を利用して情報を伝送する技術だ。量子もつれとは、2つのペアになった粒子の状態が、片方の状態に依存するように結びつく現象を指す。片方の状態が決定すると、もう片方の状態も即座に決定される。

 この量子通信を利用した量子インターネットの実現には、量子もつれ状態の光子(量子もつれ光)を生み出す技術と、量子もつれ光を光ファイバーで伝送する技術、そして量子もつれ光を中継する技術が必要となる。しかし、量子もつれ状態は非常に特殊で不安定なため、長距離の伝送が難しいという課題がある。

 そこでソフトバンクは、量子もつれ状態の光子を長距離にわたって伝送する「量子中継」技術を開発するLQUOMと提携し技術開発を進める。

 今回の実験では、ソフトバンク本社(東京港区)とデータセンター間に敷設した約16kmの光ファイバーと、LQUOMの量子通信システムを組み合わせて実施する。そして、騒音や振動といった大都市ならではの環境が、光ファイバーを通る光子の「量子もつれの状態や品質」にどう影響するか確かめる。

 量子インターネットが実現すれば、「量子コンピューター」同士を量子インターネットでつなぎ、分散して計算を行うシステムも構築できる。2030年代には古典コンピューターを凌ぐ実用的な量子コンピューターが登場すると予測されており、量子インターネットの構築も重要となる。

 ソフトバンクは2030年代を見据えて量子事業に取り組んでいる。今後は、顧客に対して量子技術に精通したSIerやコンサルタント、量子コンピューター環境を提供する事業の構築を目指している。