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東京五輪招致、37会場・4554億円の全貌
国立競技場建て直し、ビッグサイト増築…

「2020年東京大会は、世界で最も安全で先進的な大都市の中心で開催されるダイナミックな祭典になる」(猪瀬直樹・東京都知事)――。
2020年夏季五輪の招致を目指す東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会と東京都は2013年1月7日に、詳細な開催計画を記載した立候補ファイルを国際オリンピック委員会(IOC)に提出。8日に公開している。東京がアピールするのは「都市力」の高さだ。
競技会場は総数37を予定。東京圏にある33会場のうち28会場を、東京湾岸の晴海地区の選手村から半径8km以内に集約する「コンパクト」な会場配置とすることを打ち出した。また、震災復興の象徴として被災地の宮城県利府町にある宮城スタジアムを会場とする。
立候補ファイルは、大会コンセプトや競技会場、宿泊施設、輸送、環境、安全など14項目について、招致を目指す各都市が詳細な回答をまとめたもの。IOCが開催都市を選ぶ際の判断材料となる。20年夏季五輪の開催都市は東京のほか、トルコ・イスタンブールやスペイン・マドリードの3都市で争われる。開催都市は13年9月7日に開かれるIOC総会で決定する。

■メーンスタジアムは新国立競技場
立候補ファイルによると、37の競技会場のうち既存施設は15会場、新設は22会場。新設のうち11会場は恒久施設、11会場は仮設施設とする。新設会場の大半は東京臨海部に建設する。競技会場や選手村などの施設建設に総額4554億円を投じる計画だ。
ハード整備で最大のものは、開閉会式などが行われるメーンスタジアムとなる新国立競技場だ。現在の国立霞ヶ丘競技場を解体し、8万人収容の開閉式屋根付きスタジアムとして建て替える。事業主体は日本スポーツ振興センター。工事費は約1300億円を想定している。
12年11月、新国立競技場の国際デザイン・コンクールが実施され、英国の設計事務所、ザハ・ハディド・アーキテクトの案が基本構想として採用された。19年ラグビーワールドカップのメーン会場として使うため、五輪招致の成否にかかわらず行う。

■選手村は民間資金で整備
中央区晴海の都有地44ヘクタールに整備する選手村は、工事費1057億円を想定している。招致に失敗した16年五輪の立候補ファイルでは江東区有明の31ヘクタールに整備する計画だったが、IOCに手狭だとの指摘を受けて計画地を変更した。
選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設を建設する。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの住棟の配置とする。
大会終了後は住宅として供給する計画。民間事業者の開発への出資を促し、国や都の財政負担なしに整備する方針だ。
都は、選手村の配置計画、居住施設要件、インフラに関する要件、大会時の選手村の賃借についての条件などを公募時に定め、落札した者がこの条件に基づいて設計する。日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指す。

■東京ビッグサイトを増築
さらに、都が事業主体となって、臨海部にオリンピックアクアティクスセンターや夢の島ユース・プラザ・アリーナ、有明アリーナなどの施設を新設する。メディアセンターとして使う東京ビッグサイトは、既設の西展示棟南側に延べ面積約4万4000m2(平方メートル)を増築する予定だ。一部の仮設施設は大会終了後、移設することも検討する。
これら施設の設計や工事の発注は、WTO(世界貿易機関)対象の一般競争入札を原則とする方針だ。

■全ての施設でCASBEEのSランク
立候補ファイルでは、環境・防災面での取り組みを強調した。新設・改修される全ての競技会場や施設は、都の建築物環境計画書制度の基準を満たすとともに、CASBEE(建築環境総合性能評価システム)のSランクの認証評価の取得を目指すことを盛り込んだ。地震や津波などの災害、電力不足の懸念に対する備えも万全だと強調した。
都などは五輪招致に合わせて、道路網などインフラ整備を進める。整備中の3環状道路のうち、首都高速中央環状品川線が13年度に完成する。20年には3環状道路の約9割が完成する予定で、都内の交通渋滞が緩和されるとしている。また、首都高速晴海線が15年度に、環状第2号線が20年までに完成し、選手村から競技会場へのアクセスが向上するとしている。選手村の最寄り駅となる都営大江戸線の勝どき駅では駅施設が改良される。