生成AI(人工知能)を使い、声優らの偽音声を作り出して無断利用した動画がSNSに投稿される事態が相次ぎ、当事者らに不安が広がっている。
勝手に曲を歌わせたり、文章を朗読させたりしていて、専門家らは、権利の保護や悪用防止のため、AIの利用について一定の規制が必要と指摘している。(福元理央)

無許可

「コナン君に歌ってもらった」。今年7月、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」などに、そんなタイトルの動画が投稿された。人気アニメ「名探偵コナン」の主人公・江戸川コナンの「声」と称して、アニメとは全く関係のない流行曲を歌わせた動画で、投稿者は「音声はAIで作成」としている。

 コナンを演じているのは声優の高山みなみさんで、コメント欄には、「高山さんが歌ってるみたい」などと書き込まれた。高山さんの所属事務所「81プロデュース」(東京)によると、音声の使用は一切許可していないという。

同事務所の百田英生・常務取締役は「対処しようがなく、困惑している」とした上で、「今後、AI音声が映画やアニメのセリフの吹き込みなどに無断利用されるような事態にならないか警戒している。AIの利用について、まずは業界でルール作りを進めなければならない」と話す。

 多数の声優らが所属する「賢プロダクション」(同)でも、同様に声優の偽音声を無断で生成され使用されたことがあるといい、内海賢太郎・代表取締役は「わいせつな文言を言わせるような悪用に発展すれば困る。AI音声が無秩序に使われる現状は問題だ」と強調する。

(中略)

危機感
 
こうした現状に、声優らは危機感を強めている。

 著作権法30条の4は、著作権者の許諾なくAIに著作物を学習させることを認めており、セリフを含めアニメや映画のシーンを学習することも違法ではない。

 AIについて、「日本俳優連合」(東京)は6月、「表現の模倣・盗用を安易に促し、職域を侵害する恐れがある」とした提言を発表。30条の4の運用を見直し、AIが学習するデータは著作者が許可したものだけにすることなどを求めた。

 同連合に参加する声優の福宮あやのさんは、「研さんの成果を対価なく学習され、勝手に作られた声を永遠に利用されるかもしれない。声優として積み重ねてきたものは何だったのかとむなしくなる」と話す。

「規制やルール作り急務」
 著作権法に詳しい藤原浩弁護士の話「著作権法の成り立ちからして、日本ではAI開発側が優遇されており、悪用されるリスクへの備えが不十分だ。
例えば、AIで作られた音声が裁判で提出されれば、証拠の真正を常に疑う必要が生じ混乱するだろう。犯罪などへの悪用の可能性も念頭に、AIによる学習やAIの生成物の利用について、国は一定の規制やルール作りを急ぐべきだ」

(全文はソースで)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230926-OYT1T50040/
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