[東京 6日 ロイター] - 過去最大の5年で43兆円に増額した日本の防衛力整備計画が、円安で縮小を迫られている。輸入する米国製だけでなく、国産装備も部材高で価格が上昇。複数の関係者によると、防衛省は長距離ミサイルなどの購入を優先し、輸送ヘリコプターの調達数を半減、救難飛行艇の取得を見送った。岸田文雄首相が掲げた「防衛力の抜本的強化」は、計画2年目で狂いつつある。

<調達見送りでUS-2撤退も>

防衛省が2023から27年度までの防衛力整備計画を策定した昨年12月以降、米金利の先高観から円相場は1ドル=150円へ1割下落した。計画1年目こそ前提レートを1ドル=137円としたが、2年目以降は22年度の政府公式レート108円を使って予算を積み上げた。

43兆円の防衛費は、ドルベースだと3割以上消失する。政府や防衛産業の関係者8人によると、防衛省は予算全体が目減りする中で調達に優先順位をつけ始めた。敵基地攻撃にも使える長距離ミサイルの量産やイージス艦の建造、F35戦闘機や弾薬などを先にそろえ、整備を急がないと判断した装備は削減あるいは先送りしつつある。

調達の検討過程を知る関係者2人によると、防衛省は計画2年目の24年度に輸送ヘリコプター「CH-47」を34機まとめ買いする考えだったが、円安や機体改良によるコスト上昇で単価が147億円から約200億円に膨らんだため、8月の来年度概算要求で半分の17機に減らした。

米ボーイング(BA.N)が開発した同ヘリは部品の多くを米国から輸入し、川崎重工業(7012.T)が国内で組み立てる。「円安による値上がりが価格上昇要因のおよそ半分」と、関係者の1人は説明する。「残りの機数(の調達)は27年度までの計画期間中には難しい」と、同関係者は言う。

別の関係者2人によると、防衛省は24、25年度に1機ずつ検討していた新明和工業(7224.T)の救難飛行艇「US-2」の取得も見送った。前回調達した際の価格は190億円だったが、新明和の関係者によると、同社は防衛省に24年度300億円、25年度700億円で単価を提示した。

https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/TSCEDXULERKXJDZTVVFXW544VI-2023-11-06/