高齢の母親から出生する子供にダウン症のリスクが低確率であることは一般に認識されていますが、出生前診断で判断出来るのでリスクを回避可能です、また卵子のRNAは生涯に渡って変化がなくホルモンの低下により未熟な卵子が出てくる事に原因があるので卵子を適正に育てる事でもリスクを回避できます。
しかし高齢の男性の場合のリスクは甚大で精子凍結以外の方法ではリスクの回避は不可能です、また自己免疫疾患や発達障害や精神疾患と肥満が遺伝する事も知られています。
40歳以降で父親になる割合が増えていますが、今回のレビューは、父親の高齢化が子供の神経発達、学習障害、行動障害などに及ぼす影響についてです(Fertil Steril. 2022; 118:1013-1021)。
スイスのデータによると、1996年から2016年の間に、50歳以上の男性が父親になる割合が約3倍になっています。
同時に子供の神経発達障害の発生率も増加しており、CDCのデータでは、アメリカの2~8歳の6人に1人が精神障害、行動障害、および神経発達障害と診断されているようです。
以前から父親の高年齢化と子供の精神疾患との関係が統計的に有意であるという報告がありますが、
父親の高年齢化が子供の神経発達、精神、学業、行動にどの程度関係しているのかを検討した文献が紹介されていたので列挙します。
双極性障害:フィンランドの研究では、50歳以上の父親と30~34歳の父親で比較したところ、子供が双極性障害と診断される可能性は2.84倍でした。
統合失調症:2000年から2020年の間に発表された最近のレビュー23件によると、父親の高年齢化と子供の統合失調症のリスクとの間に強固な関連があります。
統合失調症を発症すると予測される子供の割合は、父親の年齢が25歳未満では141人に1人、30~35歳では99人に1人、50歳以上では47人に1人と推定されています。
自閉症:400万人の子供を対象とした集団ベースのコホート研究では、母親の年齢を調整した後、45歳以上の父親の子供が自閉症と診断される可能性は2.27倍でした。
注意欠陥多動性障害(ADHD):CDCによると、アメリカの3歳~17歳の9.8%がADHDとのことです。
1973年から2001年の間にスウェーデンで生まれたすべての人(約262万人)を対象とした研究では、20~24歳の父親の子供と比較すると、45歳以上の父親の子供がADHDと診断される確率は約13倍でした。
子供の知能:いくつかの大規模な研究では、高齢の父親の子供は男女ともに認知能力が低いことが報告されており、最も若い父親と最も高齢の父親グループの子供は知能スコアが低いという、逆U字型の関係が確認されています。
その他、高齢の父親の場合には小児期に父親の死を経験する可能性が高くなり、早期の死別に伴う金銭的・心理的・発達的な影響が出てくる可能性が高くなるというリスクなどが挙げられています。
また、高齢男性の育児行動が優れているというエビデンスは得られず、逆に妻が夫やその家族の介護に振り回され育児や家庭に手が行き届かない事、年の離れた年下の女性と結婚をする場合は発達障害や相手を言いなりにしたいというモラハラ傾向を持つ高齢男性が多い為に離婚率が高まったという結果も記載されていました。
男性が40代または50代で子供を持つことは、女性の一生遺伝子の変わらない卵子と違って老化した細胞から生み出される精子の性質上、その子供の流産や奇形や神経発達障害や精神疾患のリスクが高まることにつながります。
特に発症率が高いADHDにおいては事前に父親の発達障害や精神病について、または精子の検査が必要を勧める事が推奨されます。
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