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映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(以下、『鬼太郎誕生』)が好評である。昨年11月に公開されてからというもの、客足が衰えることはなく、1月10日時点で累計動員145万人、興行収入は20億円を突破した。なぜこんなにも好評なのだろう?

【画像】大人気バディとなった「ゲゲ郎」と「水木」

「ゲゲ郎」と「水木」のコンビネーションが作品の要
 アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第6期の劇場版であり、水木しげる生誕100周年記念作品として公開された『鬼太郎誕生』は、のちに「目玉おやじ」となる鬼太郎の父・ゲゲ郎の過去を中心に構成されている。アニメにも登場した青年「水木」の視点から描かれ、物語は彼が哭倉(なぐら)村にやってくるところから始まる。

 はたして、どのような経緯でゲゲ郎と水木は出会ったのか? そして鬼太郎誕生にまつわる謎とは何だったのか? 哭倉村で次々に起こる不可解な殺人事件を追いかけながら、ふたりはその村に秘められた因習を知るのだった。

「イケメン」に描かれたことはなかった
 水木は、太平洋戦争の生き残りで、高度経済成長期を支えるやり手銀行員。ゲゲ郎に対して初めは不信感を抱いていたものの、どんどん協力するようになり、「相棒」として信頼し合う。頭が切れ、派手なアクションシーンも見せるふたりのコンビネーションは、作品の要となっている。

 だが原作にそのような描写はない。水木は、原作にも登場はするものの、鬼太郎に振り回される地味な会社員だった。

 面白いのが、この映画ではキャラクターデザインの面でも大胆に改変されている点である。というのも、本作に登場するゲゲ郎(若き日の目玉おやじ)と水木というふたりの主人公は、原作において決して「イケメン」に描かれてはいないのだ。

ミイラ男のような醜い姿だった
 本作を見た人は「目玉おやじがこんなにイケメンだったなんて……!」と思うかもしれないが、水木しげるが彼をスマートな容貌に描いたことはなく、不治の病を患いミイラ男のようになった醜い姿で登場させるのみだった。

 水木も、ゲゲ郎も、『鬼太郎誕生』では、明らかに原作より“かっこいいキャラクター”としてリブランディングされている。そしてふたりの見事なバディっぷりこそが、本作を人気作品に押し上げている。実際、『鬼太郎誕生』のファンアートはSNSを中心に大変盛り上がっているが、その軸となるのは、水木とゲゲ郎のバディである。

 では、なぜ『鬼太郎誕生』は、ふたりのキャラクターを大胆に脚色したのだろう? こうした問いを投げかけると「そりゃ興行収入のためにふたりをわざとイケメンに描いたんでしょう?」と言われるかもしれない。

 しかし私は、ここにそれ以上の意図を感じた。この設定に込められたものは、日本のエンターテインメント業界において脈々と受け継がれる物語の系譜を踏襲した結果ではないか、と思うからだ。https://news.yahoo.co.jp/articles/82bf579e2ea64a677c89b18281aab136235c975d