教授の説明によると、塩には、紅茶の苦みを感じさせる受容体をブロックする働きがある。
味を感じない程度の、ほんのひとつまみの塩を加えるだけで、飲み物の苦味を中和できるという。
「砂糖を加えるのとは違います。みんな、塩の味がすることを心配しているのだと思う」
教授は紅茶を愛するイギリス人に対し、自分の研究を中身を見ずに判断したり、偏見を持たないでほしいとしている。研究内容はイギリスの王立化学会が出版した「The Chemistry of Tea(紅茶の化学)」に記載されている。
「実験すればいいんです」と、教授は言う。「私は自宅のキッチンでこのために、実験しました。自分の内なる科学者を呼び覚ましてください」。
フランクル氏は10歳の時に母親が初めて紅茶を入れてくれて以来、大の紅茶好きだ。
何が「完璧な一杯」につながるのか、考え方は人それぞれだ。しかしフランクル氏は、ティーバッグの代わりに茶葉を使い、お湯とミルクとよく交わるように紅茶を常にかき混ぜるよう勧めている。
レモン汁を少し絞れば紅茶の表面に現れる「あく」を取り除くこともできると、教授は付け加える。
ほかにも、紅茶の温度をより熱く保つためには、背の低いどっしりとしたマグカップを使うこと、マグカップとミルクを事前に温めておくこと、ミルクは紅茶を注いだ後に入れることなども挙げている。
こうしたアドバイスの中で、何より大事なポイントがひとつ。決して電子レンジで水を温めないこと。「健康にもよくないし、味も良くないので」と教授は言う。
「紅茶の表面に、抗酸化物質が含まれたあくができてしまうので」
紅茶を電子レンジで温めるという考え方は、イギリスでは異質に聞こえるかもしれないが、アメリカでは「まったく一般的な」方法だという。
「アメリカ人の紅茶を入れる習慣は、本当にひどい」ものだと、フランクル氏は言う。
「アメリカの高級レストランで飲んだ紅茶より、アイルランドのガソリンスタンドで買った紅茶の方がおいしかった」
「これは単に、(おいしい一杯の作り方を)知らないからだと思います。紅茶を飲まない人は、自分が誰かに『ひどい一杯』を入れていること、相手にみじめな経験をさせていることに気がつかないので」
教授は、ちゃんとした紅茶を見つけられるイギリスに行くのが大好きだと話す。
「イギリスに着けば、素晴らしい一杯に出会えると分かっているので。そういう共通の前提があるのがありがたい」
では、紅茶をめぐる米英関係はどうなるのだろうか。https://www.bbc.com/japanese/68091928
在ロンドンのアメリカ大使館はフランクル教授のアドバイスには従わず、今後も電子レンジを使った「適切な方法」で紅茶を入るとしている。これに対して英内閣府は、紅茶をいれるにはやかんで湯を沸かすのが必須だと頑なに主張している。