2023年初頭の時点で既に4TB品が出回っている、という話は昨年のロードマップでも触れた通り。では今年は? というと、2024年元旦現在で言えば、Enterprise向けはともかくとしてコンシューマ向けは依然として4TBが最上位で、ただし価格が下落しているという感じになっている。理由は簡単で、2280サイズのモジュールだとNAND Flashを片面で4つは積めるがそれ以上は困難というか不可能で、一方でNAND Flashのダイの容量は主流が512Gbit品から1Tbit品にシフトしつつあるが、1Tbit品を4つ積んでも512GBにしかならないので、実際にはこのダイを複数枚積み重ねたパッケージを利用する。4TB NANDというのは、要するに8Tbit NAND Flashを4つ(ないし、4Tbit NAND Flashをモジュール両面に4つづつ実装だが、最近はこのパターンを見なくなった)積む形だが、8Tbit NAND Flashというのは512Gbitのダイ×16ないし1Tbitのダイ×8を積層するというもので、流石にこれ以上積層するのはちょっと難しくなりつつある。

実はコンシューマ向けのコントローラであっても、PCIe拡張カードの形で使い事を前提にしているためか、最大サポート容量は16TBとか32TBになっている事が多く、なのでNAND Flashの容量がさらに大きくなれば、より大きな製品が登場する事は技術的には可能である。なので、あとは更に容量の大きいNAND Flashの量産が可能かどうか、というあたりに掛かっている。

この点に関しては、正直ちょっと厳しい。2023年中に、主要なメーカーは200層を超える3D NAND Flashの量産に入っている。Samsungは2022年11月に第8世代V-NANDの量産を開始した事をアナウンスしており、2023年にはこれを採用したSSDを発表している。SK Hynixは2023年8月のFMS(Flash Memory Summit)において321層の3D NANDのサンプルを展示した。Micronも2022年7月に232層の3D NANDの量産をアナウンスしており、これを採用したSSDも2023年には市場投入している。

では次は? というと、SK Hynixの300層でもまだ容量倍は厳しく、できれば400層位にしないと現在の倍の容量、つまり1ダイあたり2Tbitの実現は難しいのだが、こちらはこちらで製造難易度が急激に上がるし、そもそも200層を突破した時点でコストダウンも難しくなってきている。100層→200層で、bitあたりのコストは30%程度しか低下しておらず、恐らく同じ様な仕組みで400層を実現するとなると、bitあたりのコストは下がらないどころかむしろ上がりかねない。また多値化に関しても、既にTLC→QLCの時点でかなり性能や寿命にインパクトがある事が判っており、最近はQLCを利用できる製品であっても敢えてTLC止まりにして性能と寿命を延ばし、更に一部はSLCとして使う事でDRAMを省く(SLC領域をキャッシュとして使う)事でコストを下げる、なんて取り組みがされている時点で、割とこの方向は頭打ちになりつつある。技術的に言えば既にPLC(Penta Level Cell、5bit/cell構成)も不可能ではないのだが、QLCにも増して性能と寿命にインパクトが大きいので、まだ最終製品で利用されているケースはなく、2024年中もそうした製品が市場に出て来るかどうか疑問である。

現状4TBというのはSSDとしては手頃な容量であり、これを超える容量はHDDを併用といった形で使い分けがなされており、2024年もこれを継承する事になるかと思う。ただし価格的に言えば次第に下落傾向にあるので、現状だとメジャーブランドだと4TB品が3~4万円の価格帯にあるのが、年末位までには2~3万円までおちてくるかもしれない。

https://news.mynavi.jp/article/20240105-2857222/