初代宮内庁長官の田島道治(みちじ)が天皇との会話を記した「拝謁(はいえつ)記」には、政治や外交に口を出そうとする天皇を田島が押しとどめる場面が何度も出てくる。

 天皇は1952年2月18日、「吉田(茂首相)には再軍備のことは憲法を改正するべきだということを、質問するようにでも言わんほうがいいだろうネー」と改憲や再軍備に触れた。

 53年5月18日には、吉田の失言で衆議院が解散した「バカヤロー解散」などをめぐり、吉田が鳩山一郎や重光葵(しげみつまもる)らと政争を繰り広げていたことを背景に「認証をしないということがある」と繰り返した。
憲法上、天皇が政府の方針をそのまま追認しなければならないとされる首相の任命や大臣の認証に、異を唱えたいとの思いがにじむ発言だ。

 そのたび田島は「憲法ゆえ、それはできませず、大問題になりますゆえ、やはりご静観願うよりほかない」と説得する。在任中、国政に関与しようとする天皇の言動をいさめ続けた。

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