1150円(東京の最低賃金)×21×12=230万円


最低賃金引き上げ 小規模飲食店など負担増、倒産増の懸念も


厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は28日、令和5年度の最低賃金を全国平均で時給1002円に引き上げる目安をまとめた。

今年度の最低賃金の引き上げについて、小規模の飲食店などから物価高に加え、さらなる人件費の上昇により経営が圧迫されることを懸念する声が上がっている。新型コロナウイルス禍からの回復で客足が戻り、人手不足が顕在化する中、すでに最低賃金を上回る時給で働き手を確保する動きが活発化。経営体力のない小規模事業者は人手を集めにくい状況に陥っており、淘汰(とうた)による休業や倒産が増える可能性もある。

「すでに人件費を上げており、経営への負担は大きくなっているので、最低賃金の引き上げは正直、苦しい」。東京都内で飲食店を経営する男性はこう吐露する。席数20の小さな店舗だが、「今はバイトを減らし、予約客があまり入っていないときは1人で対応している」という。コロナ禍からの回復が鈍く、訪日客の恩恵が少ない地方ほど同様の声は多い。

一方で、賃上げを歓迎する声も聞かれた。24時間店舗を全国に展開するある大手小売業は、「賃上げにより消費拡大が促されれば、商品の販売も増え、結果的に経済の好循環につながる」と期待する。また、都内でバーを経営する男性からも「今までの賃金が低すぎたので、激務にかかわらず安い時給で働く従業員が減ることにつながるのはいい傾向」との声もあった。

ただ、パートの主婦ら配偶者の年収が一定額を超えると所得税などの負担が生じる「年収の壁」の問題もあり、「賃金が上がった場合、労働時間を減らす人も多い。賃金引き上げだけでは労働力を確保しにくく、こうした壁の問題を解決すべきだ」(大手飲食店)といった指摘もある。

すでに最低賃金以上の時給を提示する事業者も多い中、「アルバイトは清潔さや業務効率化など職場環境を重視して仕事を選ぶ傾向もあり、そうした環境改善に取り組める体力がなければ人手は確保できない状況にある」(同)という。(西村利也)

https://www.sankei.com/article/20230728-BEU27I4VGNNG5EXNXKEVFDXB7I/