■自分は「はずれ」ライター扱いだった

子供の頃からパソコンを通じてゲーム作りに親しんできた麻枝さん。美少女ゲーム業界へと歩みを進め、後日「泣きゲーの元祖」と呼ばれるようになる始祖的作品の一つ「ONE~輝く季節へ~」(平成10年)のシナリオを手掛けた。

「やはりクリエーターとしては、人の心に残るものを作りたい。それには、その人の感情を強く揺り動かす必要がある。人の感情に一番響くのは『泣く』ことだし、日常から切り離された別の世界のドラマを体験するのは心地良いことでもある。自分の武器は、文章と音楽を合わせて(ユーザーを)『泣かせられる』ことだと思っています」

時は1990年代後半。美少女ゲームブランド「Leaf」が手掛けた「痕」(きずあと)や「To Heart」が業界を席巻するなど、魅力的なヒロインたちとの疑似恋愛を楽しむ美少女ゲームも「ストーリー性、シナリオで魅せる」時代に突入していた。

「えいえんの世界」などの抽象的かつ文学的な要素をストーリーに織り込んだ「ONE」は当時、ゲームファンの間で反響を巻き起こした。後に「Fate/stay night」でシナリオを手掛けた奈須きのこさんをはじめ、「ONE」の影響を公言するクリエーターも多い。麻枝さんも同作について「泣きゲーという〝文化〟を生み出した作品」と語る。

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