俺は逆だと思うわ




ある職種の人間すべてがすっかり消えてしまったらいったいどういうことになるだろうか」と彼は問う。もしも朝起きて、看護師、バス運転手、ゴミ収集人、保育士、小学校教師、料理人、整備工、大工、港湾労働者らが消えてしまったとしたら、世の中は「ただちにトラブルだらけ」の「壊滅的」状況になるだろう、と彼は書いている。また作家やミュージシャン、アーティストの消えた世の中も、「陰鬱で息苦しい」、「つまらない」場所になるだろうとする。

 彼らは「本物の仕事(リアル・ジョブ)」をしており、「他者に便益をもたら」し、「世の中に意味のある影響を与える」存在である。ところが、それにもかかわらず彼らの「報酬や処遇はぞんざい」で、「冷遇されている」現状がある。

 その反対の位置にいるのが、ファンドマネジャーや金融コンサルタント、企業ロビイスト、顧問弁護士、広告担当役員などである。これらの仕事は、たとえ消えたとしても社会生活に影響を与えないものだが、彼らは「最も高給取りで、きわめて優良な労働条件」のもとにある。しかし、グレーバーによると彼らは「本当は必要ないと内心考えている業務の遂行に、その就業時間のすべてを費やす」という、無意味な「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」を行っている。彼ら自身も、自分が他者に便益をもたらす功績をはたしていないことにひそかに気づいているという。


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