>>1 拉致被害者の家族会が条件付きとはいえ「独自制裁の解除」にまで踏み込んだ背景には、被害者の家族の高齢化が一段と進み、親世代が存命のうちに再会を果たすには、あとわずかな時間しかないという強い切迫感があります。
政府が認定している拉致被害者のうち安否が分かっていない12人の親で、健在なのは
▽横田めぐみさんの母親の早紀江さんと
▽有本恵子さんの父親の明弘さんの2人だけとなりました。
このうち
▽横田早紀江さんは去年、一時体調を崩して初めて入院し、今月4日には88歳になりました。
また
▽95歳の有本明弘さんは車いすでの生活を余儀なくされています。
被害者の帰国を待つ家族が高齢化する中、政府は、おととし以降「拉致問題は時間的制約のある人道問題」という表現を使って、解決を急ぐ姿勢を示していて、去年5月には岸田総理大臣が日朝首脳会談を実現させるために、みずからが直轄するハイレベル協議を始めたいという考えを明らかにしました。
一方、北朝鮮のキム・ジョンウン総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)氏は今月15日、国営の朝鮮中央通信を通じて日朝関係をめぐる異例の談話を発表。
「すでに解決された拉致問題を両国関係の障害物としないのであれば、岸田首相がピョンヤンを訪れる日が来るかもしれない」などとしたうえで「岸田首相の本心をさらに見極めるべきだ」として、日本側の今後の出方を注視する姿勢を示しています。
拉致の被害に苦しめられてきた家族会が、条件付きとは言え、去年の「人道支援」に続いて、ことし「制裁解除」にまで踏み込んだのは、核やミサイルの問題の解決を待つ時間的猶予がない中、被害者の帰国に向けた突破口を開きたい切実な思いがあります。