もうすぐ小学校、始業5分前 それでも迷わず座り込む女性に声かけた

 香川県琴平町の小学4年生、曽根愛斗(まなと)さん(10)は毎朝、約20分歩いて登校している。

 いつもより朝食を食べるのが遅くなったその朝、通学路の道端で高齢の女性が座り込んでいるのを見つけた。

 数百メートル先に小学校の校舎が見えていたが、始業の5分前。

 急いだ方がいい時間だった。

 それでも女性に近づいて「こんにちは」と声をかけたのは、お母さんから「人に会ったらあいさつするように」と教えられていたからだ。

 でも、女性から返答はなかった。

 「大丈夫ですか」と声をかけると、「道が分からない」と小さな声で答えた。

 「先生に言ってきましょうか」という問いかけには、「はい」。曽根さんは「助けないと」と緊張し、走った。

 学校に着くと、先生に「銀行の近くでしんどそうなおばあちゃんがいる」と伝えた。先生は110番通報してくれた。

 琴平署によると、この女性は95歳。

 この日朝早く外出し、帰宅しないことを心配した家族が警察に相談していた。

 署が行方不明者届の手続きを進めようとしたところ、110番通報が入ったため、すぐに保護できたという。

 署は21日、行方不明者の発見保護に貢献したとして、曽根さんに感謝状を贈った。

 同席したお母さんによると、曽根さんは「マイペースな性格」。

 学校から帰るのが遅いなと心配していると、近所の人に「ザリガニと遊んでたよ」と言われたこともあるという。

 署員は「マイペースだからこそ、始業の時間が近づいていても女性に声をかけてくれて、保護につながったのかもしれないですね」とにこやかに話した。

 曽根さんの将来の夢は「うどん屋さんで働くこと」だという。(土居恭子)

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はにかんだ表情で記念撮影する曽根愛斗さん(中央)=2024年2月21日午後1時13分、香川県琴平町五條、土居恭子撮影