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https://news.livedoor.com/article/detail/25973414/
千葉・限界分譲地のリアル「スローライフもミニマルライフも実現しない」そもそも田舎暮らしは節約に向いていない
「資産価値ZERO─限界ニュータウン探訪記─」という登録者数16万人のYouTubeチャンネルを運営する、吉川祐介氏。首都圏や都市部での住宅価格の高騰が続くいっぽう、かつて郊外で栄えた「ニュータウン」の現在をレポートする内容で人気を博している。新著『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』より、自身が生活し、“節約に向かない街”と形容する千葉県の横芝光町でのリアルな生活を一部抜粋し紹介する。
この地に居を構えたのは単なる成り行き
僕の現在の職業は、便宜上文筆業を自称しているものの、収入の割合で言えば運営しているYouTube動画の広告収益のほうがずっと大きく、厳密に分類すれば「広告業」となる。YouTubeの収益のほか、印税、メディアへの寄稿記事の原稿料、たまに依頼が来る講演の報酬などで生計を立てている状態だ。
単純に収入面の向上だけ考えるのであれば、おそらくYouTube動画の制作に注力するのが一番効率的だとは思うが、あくまで再生数のみに応じて収益が決まるYouTubeは、作る動画によって再生数に大きなばらつきがあり、どうしても収入が不安定になる。
いくらYouTubeの世界が激戦区とはいえ、僕の作る動画は最初から視る者を選ぶ内容であり、あまり他の配信者と競合するようなものではないとは思うが、その代わり爆発的に人気が出るようなコンテンツでもないし、所詮は属人性の強い人気商売でいつ凋落してもおかしくないので、たとえ収入が下がるとしても、基本的には原稿や講演の仕事を優先している。
こんな言い方をしては何だが、僕は自分の生計が立てられれば、動画でも文章でも講演でも何でもよいのであって、その中で文章を書くのが一番自分に向いているから文筆業を自称しているに過ぎない。その程度の職業意識なので、自ら肩書を付けて名乗ることもしないようにしている。
しかし、優先する仕事がどれであろうと、基本的に自宅で仕事をしているフリーランスという立場になるので、おそらく交通不便なへき地の分譲地に住むのであれば、これが最も適した仕事だとは思う。依頼主のメディアの担当者との連絡や打ち合わせもすべてオンラインで済ませているので、講演以外で都心まで出向く必要もなく、取材さえ怠らなければ仕事は自宅で完結させることができる。
けれども、僕はこうした在宅仕事のスタイルに合わせて限界分譲地に居を構えたのでは決してなく、現在の生活は単なる成り行きにすぎない。
僕は2017年の初頭に、妻との入籍を機会に東京から千葉県の八街市に移り住んだのだが(その後、芝山町を経て横芝光町へ転出)、その最大の理由は賃料の安さと、大型免許を取得し、成田空港の周辺で、大型車の運転の仕事に従事するためだった。
空港周辺では恒常的に運送業の人材を募集しており、なおかつ賃料や中古物件の価格も安いので、そこで大型の免許を持っていれば、生活に行き詰まることはないのではと考え、大型二種免許の取得支援を行っている成田市内の路線バス会社に運転手として就職したのだ。
そのバス会社の営業所の所在地や勤務体系は、公共交通機関でまともに通勤できるようなものではなく、運転手、事務員ともにほぼ全員が自家用車で通勤していた。
自家用車は不可欠
僕が住んでいるような限界分譲地の住民は、通勤も含めた日常生活における移動のほぼすべてを自家用車で済ませているのが一般的である。元々最初から自家用車の利用を想定した分譲地であるし、今日の公共交通網の貧弱さでは、勢いそうならざるを得ないとも言える。
車を持たない都市部在住の分譲地の所有者が、今となっては自分の所有地にまともに足を運ぶ機会すらないのは、年齢のほかにこの貧弱な交通事情にもよると思う。
町内の商業施設に買い物に行く程度であれば、本数の少ないバスの運行時間に合わせて移動することは可能だとは思うが(実際にそうしている高齢者もいる)、勤務先が鉄道駅から離れた場所に立地しているのでは、へき地の分譲地でなくても自家用車を選択せざるを得ない。
車を持たずに生活するのが一番経済的であろうことは、日々の燃料費やその他諸々の維持費・税金で痛感しているのだが、すでに通勤のために自家用車を確保している以上、それを置いて公共交通機関を利用するよりは、その車で移動したほうが効率的なのだ。
我が家も現在2台の自動車を保有している。今の生活習慣を考えれば、1台だけで間に合わなくもないのだが、取材時に使うMTの四輪駆動車(別荘地は悪路が多い)と、AT限定免許の妻も使用する軽貨物のAT車の2台を使い分けている。