「世界で買えるスキー場は日本だけ」 リゾート開発、失敗すれば転売も 続々と外資進出、「いつも方針伝わらない」地元は複雑な思いも

近年、東南アジアの資本による日本の観光地への大型投資が増えており、その波が長野県内のスキー場や周辺地域にじわりと及んできた。スノーリゾートへの熱視線と円安が背景にあるが、地元には期待と地域の変化への不安が入り交じっている。

 「バンヤンツリー」ブランドの高級ホテルの開発が始まった白馬村。「(白馬エリアが)リゾート化していくには、ゲレンデ近くに高単価の宿泊施設が必要だ」。白馬八方尾根スキー場を共同運営する八方尾根開発(北安曇郡白馬村)の秋元秀樹営業・管理本部長(50)はそう話す。周辺の活性化や夏場の集客力の向上にもつながる―と期待する。

 同ホテルの計画地に近い、白馬東急ホテルの萩原博営業支配人(49)は「ターゲットは異なるが、競合しながら白馬を活性化できると思う」と言う。今冬、富裕層向けの部屋を1室開業し、今後も増やす予定。バンヤンツリーのホテルと「戦えるようにしたい」と、今後を見据える。

 海外資本にとって、長野県のスノーリゾートの最大の魅力は雪だ。日本交通公社(東京)の山田雄一観光研究部長(55)は「世界で購入できるスキー場は事実上、日本しかない」と指摘する。

スキー場が営業可能な地域は欧州や北米、日本にほぼ限られるが、リゾート経営が大規模化する北米や土地所有に制限があるヨーロッパは参入が難しい。

 ただ、購入しやすい一方で日本のスキー場も温暖化で営業期間が短くなり、索道施設は老朽化が進む。山田氏は「リゾート経営のノウハウがある事業者は世界でも少ない。お金があるから買ったが、うまくいかずにスキー場やホテルを転売する例がある」とする。北海道では近年、外国資本がスキー場や開発土地を手放すケースが続いた。

 妙高や斑尾高原の開発に着手したペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG)によると、斑尾高原一帯の計画はまだ「策定中」。将来、地域は一体どう変わるのか―。斑尾高原観光協会のスタンキー真由子会長(50)は「飯山には歴史文化や自然など魅力がたくさんあるが、どう発信していくのか。計画を知りたいし、早く動き出してほしい」と話す。

 斑尾高原スキー場の近くでレストラン・バーを営む寺瀬俊彦さん(76)は「これまでスキー場の経営者は何度も代わり、経営方針はなかなか地元に伝わらない」と複雑な表情だ。「地元と連携し、一帯に経済効果が出る開発をしてほしい」

 開発事業者は、こうした地元事業者の声をまず受け止める必要がある。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2f82be95cbd01c5d497609edde374ed3e159b32f