前方のホワイトボードにタイトルの紙が貼られ、横のスクリーンで「感謝 安倍晋三首相」などと在りし日の桜を見る会の写真などが流されている。

 白い椅子と机が等間隔に並んで、いたって普通の使いやすそうな会議室。およそ140人収容の会場は7割ほどが埋まっていた。

 全員とは言わないが、ほとんどが50代半ばから70代。男性の比率がやや高いだろうか。

 何やらバッジがたくさんついた紺ジャケットなどを着て、険しい表情の方が多い印象だ。これまでのデモ観察などでよく見てきた方々のような貧しそうな感じとは少し違う。

 スタッフも高齢だった。反対側座席の通路ではビッグモーター前社長に似たスーツ姿のおじ様がピンと背筋を伸ばし、ライトセーバーみたいな大きな赤い警棒を持って待機していた。

 司会者のおじ様は「偏向報道から国民を守る会」の代表者だという。開演挨拶では、この会を結成した経緯と、かつて都内で「トランプ大統領を応援するデモ」を開催したことなどを誇りながら、講演者の紹介に入った。

 講演者は、理学博士で札幌医科大学名誉教授の高田純氏である。

 「マスコミが反応せずに黙殺の態度を続ける中、高田先生は物理学者としての科学的視点から山上容疑者は暗殺者ではない事実を証明されました」と司会者。

 早くもツラい。どうして私がこんな講演会に…?(自分で来たんだろ)

 司会者は、講演の前に「『テキサス親父・日本事務局』藤木氏からの手紙を預かっている」として、同氏の希望により「代読をお願いする」とした。

 指名されたのは、最前列にいた漫画家はすみとしこ氏だ。立ち上がり、ハキハキとよく通る声で朗読した手紙の内容は、伊藤博文から始まる「過去に暗殺された日本の総理大臣経験者とその詳細」など。今回のテーマである安倍元首相の事件については、「あまりにも山上の供述にある某宗教団体などの理由が直接的ではない」「奈良医大病院と警察の説明の矛盾がある」などとし、「今でも周辺ビルに狙撃手がいて容疑者とされている人物は煙幕だったのではと疑っている」「真実の究明にご協力をお願いしたい」と結んだ。

 聴衆の多くは眉間に皺を寄せながらウンウンと頷いている。

 おい読者のお前ら何ビビってんだ?

 まだ講演会は始まっていないんだぜえ?へっへっへー(ヤケクソ)

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