視覚障害のある夫妻が2019年、神奈川県警の警察官に無許可で自宅に立ち入られ、下着姿を見られるなど人格権を侵害されたとして、県に計220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が21日、横浜地裁であった。高取真理子裁判長は「職務上の注意義務を尽くしたとは言えず、視覚障害者への合理的配慮の提供を怠った」などと請求を一部認め、県側に計27万5000円を支払うよう命じた。

 夫妻の代理人弁護士によると、障害者差別解消法で自治体などに義務付けられている「合理的配慮」を欠いたとして賠償命令が出るのは初めてとみられる。

 原告は横浜市に住む60代の全盲の夫と、弱視や難聴を持つ50代の妻。

 判決によると、19年10月9日午後11時40分ごろ、夫妻が住むマンションで騒音があるという110番を受けた複数の県警磯子署員が部屋を訪問。身に覚えがない夫妻は、深夜だったため署員に再訪を依頼したが、室内に上がられ約20分にわたって質問を受けた。

 高取裁判長は、室内立ち入りは原告らの意思に反して違法な上、署員は夫妻が視覚障害者だと認識していたのに訪問人数や性別の説明を省いたと指摘。女性警察官がいたのに全盲の夫は下着姿で対応を強いられたとして「(署員は)衣服を着るかどうかを確認し、その機会を与えるなどの合理的配慮を提供する義務を負っていた」と認定した。

 判決後に報道陣の取材に応じた夫は「不十分な点もあるが、主張が一定程度認められて良かった」と語った。県警監察官室の加藤秋人室長は「今後の対応については判決内容を検討の上、適切に対応する」とした。

https://mainichi.jp/articles/20240321/k00/00m/040/309000c