『ONE PIECE』ついに五老星の正体判明で新たな謎ーーなぜ尾田栄一郎は“真逆の設定”を用意した?

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※本稿は『ONE PIECE』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。

『ONE PIECE』の五老星といえば、作中でもっとも謎めいた立ち位置にいるキャラクターであり、その正体をめぐって読者たちは盛んに考察を繰り広げてきた。だが、そんな長年の議論についに終止符が打たれるかもしれない。3月18日発売の『週刊少年ジャンプ』16号(集英社)に掲載された第1110話「降星」にて、五老星についての新情報が一気に明かされたからだ。

現在、ルフィたちの冒険は未来島エッグヘッドを舞台としており、Dr.ベガパンクを抹殺しようとする世界政府の勢力が次々と襲来している。そして最新話では、五老星の全員が到着すると共に、彼らが秘めた“もう1つの顔”が明らかになった。

五老星はいずれも老人から化け物のような姿へと変わっており、ジェイガルシア・サターン聖が「牛鬼」(ぎゅうき)、マーカス・マーズ聖が「以津真天」(いつまで)、トップマン・ウォーキュリー聖が「封豨」(ほうき)、イーザンバロン・V・ナス寿郎聖が「馬骨」(ばこつ)、シェパード・十・ピーター聖が「サンドワーム」と表記されているのだった。

牛鬼と馬骨、以津真天は日本で古くから語られてきた妖怪で、封豨は中国の伝承にある生き物。一方でサンドワームは西洋ファンタジーの文脈という印象が強く、現在映画化が盛り上がっているアメリカのSF小説『デューン』に出てくるものが有名だ。まだ能力の全貌は分からないものの、それぞれ元ネタを意識しつつ大胆なアレンジを加えたデザインとなっており、迫力に満ちた見た目となっている。

また今回の正体判明シーンで気になるのは、五老星の能力が「悪魔の実」としては紹介されていなかったことだ。ほとんどのキャラクターは「〇〇の実 〇〇人間」といった紹介文と共に能力が明かされてきたため、五老星の描き方には異質な印象を受けてしまう。

ここから五老星は「悪魔の実」を食べた能力者ではなく、「悪魔」そのものなのではないか……と考察する人も。この説は以前から根強く議論されていたもので、悪魔召喚の儀式を思わせる魔法陣から姿を現すことなどが根拠となっている。

■なぜか頻出する“自由”を連想させるモチーフ

さらに第1110話ではもう1つ気になる点が存在した。今回明かされた五老星の正体は、いずれも“家畜”をモチーフとしている節がある。どういうことかというと、「牛鬼」は牛、「以津真天」は鳥、「封豨」は豚、「馬骨」は馬と対応しており、「サンドワーム」からは蚕(カイコ)を連想することができるのだ。

五老星といえば、世界政府の最高権力者として絶大な権力をもち、裏から世界を支配している存在。自由を追い求める海賊たちにとっては天敵にあたり、時には理不尽な暴力によって人々から自由を奪ってきた。

他方で家畜とは人間のために飼い慣らされた生き物であり、ある意味では“自由を奪われたもの”ということになる。すなわち五老星と人間の関係とはまるで真逆だと言えるだろう。ここには明らかに矛盾が存在しているように思われる。

また五老星の人間としての姿も、同様の矛盾をはらんでいる。ピーター聖は奴隷解放宣言を公布したエイブラハム・リンカーン、マーズ聖は自由民権運動を進めた板垣退助、ナス寿郎聖はインド独立の父として知られるマハトマ・ガンディー……といった具合に、自由と民主主義を体現する偉人たちが外見上のモデルとされているのだ。作中の五老星は人間の権利や尊厳を蹂躙し、自由に生きることを許さないキャラクターとして描かれているため、ここにも大きな矛盾がある。

むしろこうした自由をめぐるモチーフは、自由の象徴であり、奴隷たちを救う存在として信仰された太陽の神・ニカにこそふさわしいはず。なぜここでニカと五老星の立ち位置が入れ替わっているのか……。この逆転こそが、今後の展開のカギとなってくるのかもしれない。

あるいは五老星がひた隠しにしてきた「空白の100年」に、その秘密が隠されていると考えることもできるだろう。ニカと五老星が直接対峙することになった未来島エッグヘッドにて、世界の真実が解き明かされていくことを期待したい。

https://news.yahoo.co.jp/articles/076c9117570f948d076cef3e0bba23df3482a597

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