お父さん、僕もう無理だよ 中学受験に潜む“教育虐待”の実態
2019年7月8日
https://www3.nhk.or.jp/news/special/education/articles/article_03.html

深夜のリビングに響き渡る、父親のどなり声。
「何でこんな問題がとけないんだ!」
ののしられ、たたかれる小5の息子。彼は、こうつぶやくのがやっとでした。
「お父さん、僕もう無理だよ」
中学受験の末に起きた“教育虐待”の生々しい証言です。
(社会部記者 森並慶三郎)

小学生が心療内科に…
取材のきっかけは、都内の公立小学校で聞いた、ある教員のひと言でした。

「中学受験で子どもたちは疲弊している。心療内科に通院する子どももいるぐらいだから」

今どきの小学生は多忙です。
学校では新たに増えた英語やプログラミングなど。放課後も塾や習い事の数々。
なかでも大変なのが東京の小学生だと思います。

ここに中学受験が加わるからです。

それでも、心療内科に通うまで追い詰められるとは…。
私も、あの少年から話を聞くまでは半信半疑でした。

少年と出会ったのは先月。まだ幼い雰囲気を残す礼儀正しい13歳の少年。
ただ、どこかおびえているような印象を受けました。

「いったいこの子に何が…」

少年が中学受験を決めたのは、小学3年生の時。
父親から「いい経験になるよ」と言われ、軽い気持ちで挑戦することにしたといいます。


首都圏では“第2次中学受験ブーム”到来
そもそも、なぜ今「中学受験」なのか。

中学受験そのものは、リーマンショックまでがピークでした。
しかも、少子化はどんどん進んでいるのに…。

しかし、首都圏、特に東京は全く様相が違いました。

東京23区の小学生が私立中学校に進学した割合です。
最も高い文京区が42%、千代田区が39%、中央区が38%と続き、23区全体でも22%と、5人に1人に上りました。


「中学受験に詳しい専門家に、背景をうかがいました。

最も多いのは、自分も中学受験を経験した30代から40代の親たちが、子どもに勧めるケースとのことです。

いわば親子2代にわたる中学受験です。

同級生やご近所の親子に影響を受けて「うちも受験を」と考える親子も少なくないといいます。

そこに公立中学校への不信感。
さらに新しく始まる大学入試への対応なども相まって私立中学の人気は再び過熱。
しかも、少子化にあっても東京だけは子どもの数がまだ増加し続けています。
今後も過熱傾向は続くと見られています。