歴史学者の“失踪”

最初に異変に気がついたのは、古くからの友人だった。

2022年の4月のこと。

元大学教授の今西一さん(73)と連絡が途絶えた。

堀和生さんは今西さんの学者仲間で、50年来の付き合いがあった。

民衆史の研究者である今西さん。

北海道の大学を定年退職後、京都の自宅で一人暮らしをしていると聞いていた。

ついこの前の正月も、今西さんと年賀状や電話のやりとりをした。

退職後も精力的な研究活動をしている今西さんのことだ。海外調査にでも行っているだろう。

そう思って、最初は深刻には考えなかった。

しかし、連絡がとれなくなってもう3か月が経つ。

さすがにおかしい…

思い切って京都市内の今西さんの自宅を訪ねることにした。

すると、郵便受けには郵便物がどっと溜まっている。

ああ、これはただ事ではないー

堀さんは、すぐに近所の交番に駆け込んだ。

「知人と連絡が取れず、家は荒れた状態なので、調べてください」

警察官に訴えたが、台帳を見て調べたうえでこんな返事が返ってきた。

「警察は第三者に対しては何も言えません」
「調べたかったら弁護士を立てたらどうですか?」

それでも堀さんは食い下がった。

「とにかくちゃんと見てくれませんか」

しぶる警察官とともに今西さんの家まで行き、周辺を調べた。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240404/k10014411941000.html