殺虫剤に強い個体がある「ネッタイシマカ」水際対策へ…感染症研、遺伝子解析し越境ルート特定図る

国立感染症研究所は5月にも、東南アジアの8か国・地域で、デング熱などの熱帯感染症を媒介する蚊「ネッタイシマカ」の大規模な遺伝子解析調査に乗り出す。

ネッタイシマカは、遺伝子変異で殺虫剤に強い耐性を持った個体が出現している。日本では航空機に紛れ込んで見つかるケースが相次いでいるため、感染研は今回の調査で生息域などを解明し、今後の水際対策に生かす考えだ。

ネッタイシマカは、台湾南部を北限として、東南アジア、中南米などに生息するヤブ蚊の一種。高熱や頭痛を引き起こすデング熱やジカ熱を媒介する。特にデング熱には有効な治療薬がなく、世界の死者は年間で推計約2万人に上る。

感染研はこれまでベトナム、カンボジアの都市部で採集したネッタイシマカの遺伝子を解析し、標準的な殺虫剤成分ペルメトリンが効かない「スーパー耐性蚊」が確認されたとして2022年に論文で報告した。

今回の調査は両国にタイ、マレーシア、シンガポール、ラオス、インドネシア、台湾を加えた計8か国・地域の国立研究所や大学と連携する予定だ。数百か所で計1万匹を目標に捕獲してもらい、感染研でゲノム(遺伝情報)を解析する。その上でスーパー耐性蚊の生息域の広がりや生殖能力などを把握し、国や地域別の遺伝情報の差を解明して越境ルートの特定を目指す。
ネッタイシマカは寒さに弱く、日本では生息していないが、航空機に紛れ込んで国際空港で見つかるケースがほぼ毎年、報告されている。14年には、国内でも約70年ぶりにデング熱感染者が約160人確認された。

感染研の葛西真治・昆虫医科学部長は「遺伝子解析からネッタイシマカがどの国・地域から来たかわかるようになれば、日本でも重点的に調べる航空機を絞り込める。新たな殺虫の方法についても模索したい」と話している。

https://www.yomiuri.co.jp/science/20240420-OYT1T50144/

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