尼崎JR脱線事故、発生から19年 現場の追悼施設で慰霊式、遺族や負傷者ら手を合わせる
https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202404/0017581469.shtml

 乗客106人と運転士が死亡した尼崎JR脱線事故は25日、発生から19年となった。現場に整備された追悼施設「祈りの杜」(兵庫県尼崎市久々知3)では追悼慰霊式が営まれ、遺族や負傷者らが手を合わせた。

 祈りの杜は、電車が衝突したマンションや隣接地をJR西日本が買い取り、2018年に整備した。マンションは4階部分までが残され、破損した外壁などが事故の被害を伝える。慰霊碑や犠牲者の名碑、事故概要の碑文も並ぶ。

 25日は朝早くから関係者を乗せた車両が次々に到着した。事故が発生した午前9時18分の少し前、現場近くを快速電車が速度を落として通過した。周辺では、祈りをささげる人たちの姿が見られた。

 式典では、JR西の長谷川一明社長がおわびと追悼の言葉として「ご遺族様から時が経過しても癒えぬ悲しみを拝聴し、残された品を拝見して、多くの方の人生を変えてしまった重大さに思いを致します。事故に正面から向き合い、深く反省して安全性の向上に努めてまいります」と述べた。参列者が献花し、追悼の列が続いた。

 会場周辺はシートで覆われ、式典は一般には非公開とされた。現場を訪れたくなかったり、遠方に住んでいたりする遺族ら向けに、尼崎市内に映像の中継会場を設け、オンライン配信もした。

 JR西は全社員のうち、事故後に入社した社員が今月1日時点で約1万7千人と、全体の約68%に上り、惨事の風化を防ぐ取り組みが課題となっている。

 新型コロナウイルス禍の影響が和らぎ、鉄道利用は回復傾向にあるが、ローカル線の収支悪化が深刻になるなど、業績改善と安全対策強化の両立を迫られている。

 一方、同社は事故車両の保存施設の整備を、大阪府吹田市の社員研修センターの隣で進めている。25年12月ごろの完成を目指しているが、遺族の間では一般公開や事故現場での保存を求める声も出ている。(岩崎昂志)

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【尼崎JR脱線事故】 2005年4月25日午前9時18分ごろ、尼崎市のJR宝塚線塚口-尼崎間で、宝塚発同志社前行き快速電車(7両編成)が脱線し、線路脇のマンションに激突、乗客106人と運転士が死亡、493人が重軽傷(神戸地検調べ)を負った。JR西日本の山崎正夫元社長が業務上過失致死傷罪で在宅起訴され、井手正敬(まさたか)元会長ら歴代3社長も同罪で強制起訴されたが、無罪判決が確定した。