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ソニー“首掛けエアコン”が5代目に、専用部品で性能を大幅改善

2023年、日本の夏(6~8月)の平均気温は、1898年の統計開始以降、最高を記録した。東京では同時期に猛暑日(最高気温セ氏35度以上)が22日、真夏日(同30度以上)が68日もあった。日本気象協会の予測によれば、2024年も太平洋高気圧が強まれば、2023年に匹敵するような猛暑になる可能性があるという。

 うんざりとする暑さが常態化するなかで、年々市場が拡大しているのが暑熱対策デバイスだ。中でも元気なのが、ソニーグループが開発した“首掛けエアコン”「REON POCKET(レオン・ポケット)」。首元(背中側)に装着して接触部分の体表面を直接冷やしたり温めたりするデバイスで、2020年の初代製品の発売以降、毎年、完売が続いている人気商品だ。主に都市圏のビジネスパーソンの、通勤や仕事中に使われている。

 「これまでのシリーズで最大の進化を遂げた。国内の部品サプライヤーを含めて包括的に開発できる体制が整ったことが大きい」。REON POCKETの生みの親である伊藤健二氏は、2024年4月23日に発売した5代目製品「REON POCKET 5」の性能向上に自信満々だ
吸熱性能や駆動時間を大幅に向上するなど基本性能を高めた。温度センサー、温湿度センサー、加速度センサーを搭載する。本体の寸法は約55mm×23mm×117mm。質量は約116g。価格はオープンで、本体にネックバンドが付属する「RNPK-5」の市場推定価格は1万7600円
 同氏は現在、ソニーグループからREON事業をスピンオフすることで誕生し、2024年4月1日に事業を開始したソニーサーモテクノロジー(東京・港)の代表取締役を務めている。同社は個人を快適にすることを目標に、REON POCKETの開発・販売や温度ソリューション、IoTクラウドサービスなどを提供する。

 REON POCKETは、直流電流を流すと片面で吸熱(冷却)し、反対面で放熱(温熱)するという性質を持つ半導体「ペルチェ素子」を活用するサーモデバイス(熱制御機器)である。電圧によって0.1度刻みで温度を制御でき、電圧の向きを変えることで冷却と温熱を切り替えられる。

 その5代目は、2023年に発売した4代目「REON POCKET 4」と比較して、駆動時間が最大約1.8倍、吸熱性能が最大約1.5倍と基本性能が大幅に強化された。吸熱性能(冷却面から熱を吸収する量)が高まったことで、これまでは「レベル4」が最高だった冷却段階に「レベル5」が追加された