外貨準備を売却する為替介入しか手段はない
外貨準備の含み益を実現益に替え、政府の歳入とするためには、外貨準備を売却する以外に手段はない。それは、政府の為替介入に他ならない。政府は9月22日からドル売り円買いの為替介入を実施しているが、それは為替の過度な変動への対応という位置づけで、米国など他の主要国からなんとかギリギリ理解を得ているものだ。

他方、国内経済対策のための財源確保の狙いで政府が為替介入を実施する場合、それは他国の理解を得ることができるとは思えない。為替相場を不当に操作したとして、米国は日本を為替操作国に認定するのではないか。

また、23兆円を一般会計に繰り入れるために外貨準備を取り崩せば、外貨準備は一気に14%も減ってしまう計算だ。円買い介入の原資が大きく減ることは、先行きの為替介入の持続性への期待を低下させ、円安を後押ししてしまう可能性もあるだろう。

外貨準備の含み益は使うことができない「埋蔵金」
一方国民民主党は、外貨準備を取り崩さずにその「評価益」を償還の裏付けとした政府短期証券(FB)の発行も提案している。しかし、「評価益」を実現益にすることができないのであれば、それは何ら裏付けとはならず、単なる新規の国債発行と変わらなくなる。為替の変動を受けて、評価益の金額自体も常に大きく変動してしまうのである。

このように、円安で膨らんだ外貨準備の含み益は、決して使うことができない「埋蔵金」なのである。

(参考資料)
「外貨の含み益、財源に? 円安で「37兆円」、財務省は反論 為替介入のため保有」、2022年11月1日、朝日新聞

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/1201