ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領は16日、リオデジャネイロの海岸で支持者を前に演説し、ルラ・ダシルバ政権が進めようとするSNS規制を「検閲だ」と批判した。敗北を喫した2022年大統領選の結果にも改めて疑問を呈した。

 過激な発言から「南米のトランプ」と称されるボルソナロ氏は復権の野心を抱く。大統領選の敗北を認めず、「三権を取り囲め」といったSNS投稿にあおられた支持者らが連邦議会などを襲撃した事件から2年が過ぎた。26年の次期大統領選を見据え、陣営は事件後も政敵を攻撃する偽情報やヘイトスピーチ(憎悪表現)の拡散を続けている。

 ボルソナロ氏は大統領選の結果を覆すため、クーデターを企てたとして2月に起訴された。起訴後初めて公の場に姿を見せた16日、容疑を「でっち上げ」と非難し、「ボルソナロ抜きの選挙はブラジルの民主主義の否定だ」と訴えた。

 SNSを駆使して18年の大統領選で当選したボルソナロ氏は、大統領府に次男カルロス氏が主導するネット広報チーム「憎悪室」を設け、公費をつぎ込んで偽情報などを組織的に拡散したとされる。ルラ政権への交代後も組織を引き継ぐ形で、ボルソナロ一家や議員、インフルエンサーらが虚実の入り交じった情報を発信し、SNSの対話アプリ「ワッツアップ」などで教会や軍関係者のグループを通じて広げている。

 ボルソナロ氏らは2月、米国際開発庁(USAID)が22年の大統領選で現大統領のルラ氏が勝利するように資金援助していたという根拠のない情報を拡散した。リオグランデ連邦大言語学研究センターのエリアラ・サンタナ研究員は「公権力の後ろ盾がない今も農業団体やビジネス界など民間の資金援助は続き、後継組織は依然として活発だ」と指摘する。

 偽情報の拡散はルラ政権を揺るがす。大手調査会社ダタフォーリャが2月に発表した世論調査では、ルラ氏の支持率は過去最低の24%に低下した。ボルソナロ氏陣営が投稿した「国内で普及する決済システムにルラ政権が課税する」との偽情報の広がりが影響したとされる。ルラ氏は「彼らはうそをつき、我々を破壊しようとする」と神経をとがらせる。


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