
「もう後戻りできない」百地章氏が憲法改正へ「2点突破」強調、緊急事態条項と自衛隊明記(産経新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/9d10c96ab781602bb736de98df043769bde33e39
憲法記念日を控えた27日、前橋市で「群馬憲法フォーラム」(主催・美しい日本の憲法をつくる群馬県民の会)が開催され、日本大学名誉教授の百地章氏が「憲法改正の実現に向けて」と題し講演した。
■緊急時の根拠規定なし
百地氏は緊急事態条項と自衛隊の明記の2点に絞って論じた。前者について百地氏は道路交通法を例に挙げて緊急時、緊急車両が信号を無視してよいと平時とは異なる規定があるにもかかわらず、憲法は平時のみで国家の緊急時に対応できていない点を指摘した。
緊急時には政令などをつくって対応してきたが、憲法に根拠規定がないために官庁が対処できない事態が現実に生じたとして、東日本大震災の巨大津波による大量のガレキ処分の際、財産権の不可侵を規定した憲法29条が立ちふさがり、家具などのガレキを自治体などが緊急処理できなかった事例を挙げた。
「国家レベルでは緊急時の規定が抜け落ちた、まことに不思議な国になっている」と指摘した。
■自衛隊明記だけでも大きな効果
百地氏は、自衛隊について実態は軍隊でありながら「戦力不保持」を定めた憲法9条2項の下では法制度上、軍隊ではなく警察組織になると指摘。その結果、「軍隊の権限」とされる「ネガティブ・リスト」方式(捕虜虐待禁止など国際法などで禁じたこと以外の権限行使は原則自由)ではなく、「警察の権限」である「ポジティブ・リスト」方式(法で規定したことしかできない)を強いられていると指摘した。
ただ、9条2項の改正は極めてハードルが高く、次善の策として、故安倍晋三元首相が「自衛隊保持の明記」を提起したとした。明記の意義として、①自衛隊違憲論を解消できる②自衛隊の法的安定性を高める-の2点を挙げたうえで、自衛隊員の社会的地位や待遇の改善、「自分の国は自分で守る」との国民の決意表明は「対外的な抑止力になる」とした。
さらに、国民投票まで進めば、「2カ月以上に及ぶ運動期間を通じ、国民の国防意識や国歌意識が必ず高まり、これ自体が活力を生む」と効果を強調した。
■国民共同体としての国家観を
百地氏は改憲への国会発議を改めて求め令和5年11月以降、与野党幹部に陳情を続けた経緯を説明。岸田文雄前首相にも再三要請し昨年9月、ようやく「改憲の論点整理」として、自衛隊明記と緊急事態条項について盛り込むことをまとめた。「これはもう後戻りはできない。石破茂首相も引き継ぎ、やらざるを得ない状況だ」と指摘した。
これに先立つ冒頭挨拶で美しい日本の憲法をつくる群馬県民の会代表で、憲法審査会参院会長の中曽根弘文参院議員は、国会での審議が進まない現状を陳謝。衆参両院の3分の2以上の賛成で初めて国民投票に至るが、改正案自体を国会がまとめられない状況を「まことに申し訳なく思っている」とした。
百地氏は現憲法の問題点として、個人を絶対視して「国家観、家族観が見えてこない」点を指摘。特に国家=権力体としての政府」とのみとらえ、国民共同体としての国家の視点が「抜け落ちている」。憲法には不可欠な日本の国柄も入れ込んだ憲法へと改めるよう強く求めた。