新型コロナで消費が落ち込み、生乳が余り始めたことがニュースになると、「バターやチーズにすればいいのでは?」というコメントや疑問をよく見かけました。

たしかに当初は、バターや脱脂粉乳を大量に製造し、倉庫に保管していました。しかしそれも徐々にいっぱいになってしまったのが現在の状況なのです。
倉庫の空きがなく、生乳を減産する、または廃棄するしかなくなってしまったのです。
「生活困窮者や途上国に乳製品を支援すればいいのでは」という意見もありましたが、大量の乳製品を支援に使うには、それ相応の仕組みが必要です。

それを構築するのに膨大な時間もかかりますし、毎年一定量が余るかどうか分からない中で仕組みを作っても、安定した支援にならない可能性もあります。
途上国への支援に使う場合、本来その国にビジネスとして乳製品を輸出したいと思っていた国との関係が悪くなる可能性もあります。
鮮やかな打開策はそう簡単には見出せません。難しい状況の中で、生乳が余り続けてしまっているのです。

日本の酪農の構造
牛は暑さに弱く寒さに強い生き物で、夏は生乳の生産が少なく、冬は増えます。
一方で、消費はその逆。夏はたくさん飲まれるので消費量が大きく、寒い冬は消費が落ち込みます。
このギャップを埋めるため、夏に生産量の基準を合わせつつ、生乳が余る冬に、比較的消費期限が長いバターや脱脂乳・チーズなどの乳製品を製造しています。
できた乳製品は乳業メーカーなどの巨大な倉庫に保管。消費の状況に合わせ、安定して供給できるようにしています。
また生産の半分近くを占める北海道から、消費の大半を占める東京といった都市部に乳製品を送って、全国の消費バランスも調整しています。

しかし牛乳などの飲用と、バター・チーズ、などの加工用では販売価格が大きく異なります。
地域により異なりますが、飲用は約120円ほど、加工用は約75円ほどです。加工品は日持ちするので、輸入品の存在が影響しています。
日本は海外と比べて、土地が狭くて大規模化が難しい、政府の補助が少ないといった理由で、牛の餌にかかる費用が高いといわれています。
安い輸入加工品と価格で負けてしまう……。そうならないよう、加工品用の生乳の価格を安くして、乳業メーカーが安く乳製品を作れるようにしているのです。

加工用として売ると、かかった経費を下回って赤字になってしまうケースも。特に加工用の生乳を多く生産している北海道では、売り上げが大きく下がってしまいます。
そのため、政府は販売価格に「加?原料乳?産者補給?(補給金)」という補?をして酪農家の売り上げを安定させています。
https://withnews.jp/article/f0230211000qq000000000000000W0dy10701qq000025495A