有休取得妨げる「アリバイ労働」と「戦後特例」
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/15/200475/020300090/

まずは、有給休暇の“そもそも話”からしなくてはならない。日本では「有給休暇の分割」が認められているけど、国際労働機関(ILO)は、原則として有給休暇の分割取得を認めていない。つまり、「労働者はまとめて休む必要がある」から、有給休暇という制度が誕生したのだ。

遡ること、今から100年前の20世紀初頭。「精神的かつ知的な休息は、労働者の健康のために不可欠である」との理由から、週休とは異なる連続休暇を労働者の権利だとする考え方が欧州の労働組合に存在していた。
ILOの報告によれば、1926年には既に有給休暇はスウェーデンの労働者に広まっていて、1935年にはほとんどの欧州諸国の企業が、労働者に有給休暇を与えていた。

そこでILOはそういった現状をたたき台に、1936年、「1年以上継続して働くすべての労働者は、連続した最低6労働日の有給休暇を享受する」とした条約(第 52 号条約)を定め、「この最低基準を超えるものに関してのみ、特別に有給休暇の分割を認める」としたのである。

その後改訂を重ね、現在は1970年の第132号条約が、世界基準になっている(以下抜粋)。
・労働者は1年勤務につき3労働週(5日制なら15日、6日制なら18日)の年次有給休暇の権利をもつ。
・休暇は原則として継続したものだが、事情により分割も可
・ただし、分割された一部は連続2労働週を下回ってならない
・祝日や慣習上の休日は年次有給休暇の一部として数えてはならない

要するに、20日の有給休暇が付与されている場合、少なくとも10日は連続して休むことが求められているのである。

だが、残念なことに日本はこの条約を批准していない。日本は先進国の中では珍しくILOの条約のいくつかを批准していないのだが、そのうちのひとつが「年次有給休暇に関する条約」なのだ。