ティターンズが瓦解した要因は、ジャミトフの理想とバスクの行動がかみ合わなかったことにあります。

 ジャミトフは悪人ではありますが、上に立つ者としての器量は持ち合わせていました。
自分の乗り込んだ戦艦が被弾した際も、「私には構うな! ティターンズの艦隊員の心配をしろ!」と発言しています。
また、富野由悠季監督の書いた小説版では、ティターンズ設立時に家族と離縁して迷惑が及ばないよう考慮していました。

 この小説版ではTVアニメ版では不明瞭だったジャミトフの考え方がたびたび出てきます。
TVアニメ版でもここまで描いていれば、ジャミトフの評価は多少なりとも変わっていたかもしれません。
その行動は許せないものかもしれませんが、本質は地球再生を目的とした理想家だったのでしょう。

 一方、バスクはまさしく暴力装置ともいうべき人物でした。
徹底した地球至上主義者であるだけでなく、一般市民の大量虐殺を平然とこなし、射線上の友軍を顧みず敵もろとも攻撃する、自身の作戦に意見した部下を殴り飛ばすことまであります。
徹底した悪役として描かれていました。

 連邦議会の懐柔など、ジャミトフは政治家としては有能でしたが、それに専念するためにも片腕となる有能な軍人が必要だったのでしょう。
それがバスクというわけです。
バスクはジャミトフの期待に応えるだけの戦果をあげますが、その行き過ぎた過激な行動が長期的な目で見ればティターンズに悪影響を及ぼします。

 その結果、バスクへのけん制も兼ねて、危険だとわかっていながらもジャミトフはパプテマス・シロッコを重用することになりました。
血判状を差し出すというシロッコの芝居がかった行動に注意を払っていたジャミトフでしたが、結果的に暗殺されて命を落としてしまいます。

 その行動をうかつと思う人も多いのですが、シロッコも当初の目的はハマーン・カーンの暗殺で、寸前まで両者の利害は一致していました。
ジャミトフ最大の誤算は会談場へのシャアの乱入、そしてその結果シロッコとふたりっきりになってしまったことでしょう。

 こう振り返ってみると、ティターンズの組織崩壊の要因は、急速に勢力を拡大しながらも、責任ある立場に席を持つ人物の少なさ。
つまり人材不足だったのでしょう。物語終盤でジェリド・メサを側近にしたことも、バスクやシロッコが信用できないことからの行動だったのでしょうが、一介のパイロットを傍に置くほど人材がいなかったとも考えられます。

 内に秘めた野心の成就のため、ティターンズを結成したジャミトフでしたが、結果的にその目的を理解できないバスクの行動が組織崩壊のきっかけを作ってしまいました。そして、ジャミトフの思惑を知りながらもそれを利用したシロッコ。
心から信用できる同志がいなかったことがジャミトフ最大の敗因だったのかもしれません。

https://news.yahoo.co.jp/articles/31d76e236e0dbc7721baa8f72433e84fee2d2c0f