「レタスの苗を植え付ける4月までに、無事に来日できるといいのだけど……」。冷涼な気候のため日本有数のレタス産地として知られる長野県川上村。外国人技能実習生を雇ってきたレタス農家、古原栄夫(ふるはらひでお)さん(65)の表情はさえない。

 年間に約280トンのレタスを出荷する。例年、早朝の収穫作業などのため実習生2〜3人を受け入れてきた。政府の新型コロナ対策で2020年末から1年近く、実習生ら外国人の新規入国が認められなかったものの、他の外国人労働者を確保し、「何とか乗り切った」という。

 国内の感染状況が落ち着き、政府は11月8日、実習生ら外国人の入国制限を大幅に緩和した。古原さんは感染再拡大の不安を抱えながらも、人手を確保しようと準備を進めていた。そのさなかの入国禁止措置だ。人手が足りないと生産量を減らさざるを得ず、収入減に直結するため、「死活問題だ」と訴える。

 住民数が3872人(11月末現在)の川上村では、春から秋にかけての農繁期にベトナムやフィリピンなどから来日して働く実習生が約1000人にも上る。実習生なしには農業が成り立たないが、21年の受け入れ人数は約700人にとどまったとみられる。足りない人手は、他の在留資格で日本にいる外国人で補った農家が多い。

 古原さんは今後、違法なブローカーに手を出す農家が出て、村全体に厳しい目が注がれることを懸念する。コロナ禍により外食産業でのレタス消費量が低迷し、肥料を含む原料価格が高騰するなど厳しい状況が重なる。「入国禁止が長引かなければいいのだが」。気掛かりな中、農機具の手入れを続けている。
https://mainichi.jp/articles/20211208/k00/00m/040/272000c