もう愛は冷めてしまったのか。現役引退後、全国の公園に展示されている蒸気機関車(SL)。
大事にされていると思いきや、なかには放置されて「野良化」するケースもある。各地に請われて迎えられた時代も今は昔。
「格差社会」が到来しているSLの余生を追った。【松原隼斗】

11年間手入れされず
 かつて黒光りしていた車体は色あせ、さびが全面を覆う。正面のヘッドライトもなくなり、どう見ても荒れている。JR山陰線・益田駅(島根県益田市)にほど近い、こぢんまりとした児童公園。ここにあるSL「C57形156号機」の今の姿だ。スマートな外観から「貴婦人」と呼ばれた面影はもはやない。公園にいた30代の男性会社員は「自分が小さい頃はきれいだった。せっかくなら手入れをして、子どもたちに興味を持ってほしい」と求める。

 このSLは播但(ばんたん)線(兵庫県)や山陰線で活躍した。1974年に引退し、翌年に国鉄から貸し出されたものだという。公園とSLを管理する市によると、塗装などの手入れをしたのは11年前が最後。担当者は「可哀そうで何とかしたいが、予算が限られており手が回らない」と頭を抱える。

 こうした放置SLは、飼い主のいない「野良猫」にかけて「野良SL」と鉄道ファンらに呼ばれる。北海道北見市の公園や山口県周南市の動物園など各地にあり、全国で問題となっている。

以下略
https://mainichi.jp/articles/20211208/k00/00m/040/159000c