インド新幹線「赤いはやぶさ」発車ベルはいつ? 国際政治を背負う鉄道の行方

日本が協力するインド新幹線の建設が難航している。目標にしていた2023年の開業は、少なくとも5年は遅れる見通しだ。
インドにとって初めての高速鉄道は、ムンバイから北上し、モディ首相の地元でもあるグラジャート州のアーメダバードを結ぶ908キロ。JR東日本が「はやぶさ」として東北新幹線で走らせるE5系が投入される。最高時速は320キロ。両地を最速2時間30分で駆け抜ける。現在の半分以下である。車両の色はエメラルドグリーンからヒンドゥー教でおめでたい色とされる赤に変わる予定だ。インド政府はもともと中国に任せる方向で検討していたが、日本が2012年に逆転して獲得した。
こうした国際政治を背負う新幹線は、沿線に設ける研修所の建設に「着工」しただけで、軌道、つまり線路の敷設はまったく進んでいない。独立75周年にあわせて22年に一部でも前倒しして開業したいと「無理難題」(日本企業幹部)をふっかけていたインド側も、さすがに引っ込めたほどである。
理由は、21年末時点で土地を1割しか収用できていないことが大きい。さらに建設の手法をめぐって「あらゆるテーマ」(日本政府高官)において、日印で激烈な議論が続いているからだ。7割近くは盛り土でかさ上げして整備するはずだった線路は、トンネルや橋を除いてすべて高架に変更された。動物などが線路に入って運行を妨げないようにするためでもあり、土地収用を少しでも楽にするためでもある。当然、事業費は膨らむ。8兆8000億円の円借款が3倍になるという試算すらある。インドから見れば、年利は0.1%、15年間据え置きで50年かけて償還すればよいという「無利子同然」(インド政府高官)の好条件だ。いっぽう、日本からみれば国民の税金をどこまでつっこむのか、不安になってくるほどだ。

アジア各地で鉄道を取材するなかで、この事業にかかわっている多くの日本企業から「難航」の話をボヤキとともに耳にした。「インドの新幹線は終わりが見えない。ここで造っているうちは、日本勢は人材が足りず、マレー半島にせよタイにせよ他国の新幹線輸出には対応できない」(大手商社幹部)。
https://globe.asahi.com/article/13124222