長野県茅野市は新年度、市内のバス路線のうち14路線を廃止し、乗り合いタクシーに予約して乗る「デマンド交通」に切り替える方針だ。廃止予定の14路線は市街地循環バスや御狩野線、中沢線、丸山線などの生活路線が対象。廃止される路線の利用者は1日計300人程度という。
 廃止時期は6月末。5月中旬から乗りたい時間を予約して乗る「デマンド運行」が始まり、7月から本格実施される。運行エリアは観光地や別荘地を除く市内で、利用者は、事前にスマートフォンのアプリや電話で予約する。
 人工知能(AI)を活用したシステムにより、予約状況に応じた最適ルートが運転手に指示され、乗降可能な場所は、利用者の自宅前を含め、格段に増える。既存のバス停は2百数十か所だが、システム上の「仮想バス停」は数千か所になるという。
 ただ、利用者からは定時運行がなくなることへの戸惑いの声も聞かれる。茅野駅前で市街地循環バスを待っていた同市宮川の女性(81)は「発車時間が決まったバスのほうが重宝で、廃止されると困る」とし、一緒にいた女性(77)も「市民との対話なく廃止するのは納得がいかない」と話していた。
 デマンド交通への転換で、市の財政負担は減る見通しだが、今井敦市長は「市の負担軽減より、多くの人に利用してもらうことが重要だ」と話す。運行エリアの別荘地への拡大や、スマートフォンでの予約が難しい高齢者などに対し、使い方講座の実施なども検討していくという。

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