日本が水素で負けるのか?

次世代エネルギーの「本命」とも言われる水素。脱炭素社会実現に向けた切り札です。日本は2017年、世界に先駆けて水素基本戦略を策定しました。
しかし、その後、世界各国も「本命」を手に入れようと力を入れ始め、今は激しい争奪戦となっています。
スマホや半導体のように欧米にまたもや先を越されてしまうのか。厳しい現状と日本の勝ち筋を探ります。

経産省内の危機感
日本のエネルギー政策の司令塔である経済産業省。ある幹部が私に深刻な表情でこう打ち明けました。
「日本が脱炭素燃料でも世界に負けてしまいかねない事態だ」
日本が世界に負けてしまう?
この幹部が危機感を募らせていたのは水素のことです。水素は水からも作ることができ、
燃やしても二酸化炭素を出さない、理想的な次世代エネルギーと期待されています。

水素の実用化に向けて海外が猛追してきています。
代表格はドイツです。日本から遅れること3年、ドイツは2020年に国家水素戦略を策定しました。
国内の水素技術の創出や海外との連携におよそ90億ユーロ、日本円で1兆円を超える強力な支援を決めました。

そして、再生可能エネルギーから水素をつくる装置の設備投資に多額の補助金を拠出します。
この装置を水素の製造コストが安い中東やアフリカなどに輸出し、現地で製造した水素をドイツに輸入する戦略を動かし始めています。

グレー水素
天然ガスなど化石燃料でつくる(何もしない)

ブルー水素
天然ガスなど化石燃料でつくり、製造時に発生する二酸化炭素を地下に埋める

グリーン水素
再生可能エネルギーで水を電気分解してつくる

今、世界中の水素は99%がグレー水素だと言われています。
欧米は製造時の二酸化炭素の削減基準を示し、ブルー水素の基準を厳しくしています。
まだこの分野で明確な国際基準がないなか、先行して基準を示すことで水素の国際標準を主導したいという思惑があるものとみられています。

日本は国として基準を示せていません。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220511/k10013620711000.html