まだまだ現役でトップガン新作も翻訳してます



戸田奈津子さんも現在、85歳。さすがに一緒に舞台に立って通訳を務めることが難しくなったのか、
今回は別の方がトムの通訳だった。映画業界には有能な通訳が何人もいるので、まったく問題ない。
むしろ戸田さんは字幕が専門。しかしトムのように彼女と親しくなったスターたちは、横に一緒にいて通訳してもらうことで安心感やリラックスを得られるようだ。
こうした戸田さんへの信頼は絶大で、たとえばニューヨークでラッセル・クロウの日本人向けインタビューが行われた際に、
気難しいと評判だった彼の機嫌を損ねないよう、わざわざ戸田さんを日本から連れて行く……なんてこともあった(そのおかげかどうか、取材は順調に終わった)。

また、公私ともに親しくなったスターも多く、とくにリチャード・ギアは結婚式にも呼ばれ、ニューヨークへ行くたびに自宅に招かれるほどの仲。
故ロビン・ウィリアムズは来日の際に京都などの旅行にも付き添ったりして家族ぐるみで親しくなったというし、
そのほかハリソン・フォードなど仕事を超えた関係を育んでいた。トム・クルーズも、何か機会があるごとにカードやギフトを戸田さんに送っていたのは有名な話だ。


今回、トム・クルーズの通訳から離れた戸田奈津子さん、ではお元気なのか? 数年前、ちょっと耳が遠くなってきたので通訳が難しいと、
映画会社の関係者から聞いたこともある。心配したところ、この日の記者会見の関係者席に戸田さんの姿が! 
ステージ上から彼女に気づいたトムは、自身の答えが訳されている間などに、戸田さんに向かって手を振り、変わらぬ愛情をアピールしていた。
会見場から出て行く時もスタスタ歩いており、元気そう。おそらく今回は、仕事を離れて2人は旧交を温めるに違いない。

そして戸田さん、字幕翻訳の仕事はまだまだ現役。今回の『トップガン マーヴェリック』はもちろん、
夏の大作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』でも字幕翻訳でクレジットされている。
かつて『ロード・オブ・ザ・リング』などで、戸田さんの字幕が映画ファンからツッコミを入れられ、今で言う炎上案件として語り草になったので、
『トップガン マーヴェリック』には元航空自衛隊空将の永岩俊道氏が、『ジュラシック・ワールド』も専門家が字幕監修に加わり、万全の体制ではある。
いずれにしても字幕翻訳の仕事を世に知らしめた功績は大きいし(味わい深い訳も多い。そこに賛否両論もあるが)、
何よりハリウッドスターの素顔とその歴史を語り継ぐ“伝道者”として、まだまだ活躍してほしいと切に願うのである。

https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohiroaki/20220523-00297393