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生産コスト上昇で「モヤシ」業者が悲鳴 ラーメン店で山盛りモヤシを残す客に「道具ではない」と嘆きも〈dot.〉
5/31(火) 11:30配信
モヤシの生産業者がかつてない苦境に立たされている。原料種子価格の高騰や、ロシアのウクライナ侵攻の影響など
による原油高で輸送費や工場での燃料費がかさみ、生産コストが上昇している。にもかかわらず、
小売店への納入価格はなかなか上げてもらえない現状に、生産業者からは「薄利で耐えてきたが、もう限界」
と悲鳴が上がる。客寄せの目玉として激安販売されるなど「食卓の優等生」「財布に優しい」のレッテルを押し付けられて
きたモヤシ。安価な値札の向こうには、ギリギリの経営に苦悩し、廃業を選ぶ生産業者たちの現実がある。
* * *
「うちのモヤシが9円で売られている」
今年に入って、モヤシの全国的な業界団体「工業組合もやし生産者協会」(東京)に、こんな報告が上がってきた。
一緒に送られてきた画像には、店頭でおなじみの200グラムのモヤシ一袋が毎日「9円」で売られている様子が写っていた。
モヤシの小売店への納入価格は、200グラム一袋で20円台が一般的だ。協会ではこうした小売店での「不当廉売」と
考えられる事例については、公正取引委員会(公取委)に申告することにしている。今回のケースでは公取委から
小売店に対し注意がなされ、店頭価格は19円に上がった。それでも格安の価格である。
「モヤシは客寄せの目玉としての扱いが定着しており、消費者にも『安くて当たり前』という意識が根付いてしまっているのです」
苦渋の表情でそう話すのは、同協会の理事長でもある旭物産(水戸市)の林正二社長だ。
総務省の家計調査によると、モヤシ100グラム当たりの平均購入価格は2000年は19・15円だったが、21年は15・33円。
「店頭に並ぶ200グラム一袋は、30年前は約40円でしたが、ここ10年は30円程度に落ち込んでいます」(林社長)
その一方、中国から輸入しているモヤシの原料種子「緑豆」の価格は2010年以降、ほぼ右肩上がり。
ここ2年は天候不順による不作なども影響し、今年は昨年より2割以上価格が上がっている。生産コストの上昇分が、
小売価格に反映されない状況が続いてきた。
林社長はこう訴える。
「これまで、がまんしてがまんして薄利でやってきましたが、もう限界です。今後、緑豆や燃料費のさらなる高騰が予想され、赤字に転落する日が近づいています。納入価格をせめて2円でも、できることなら4~5円上げていただきたい」
協会は業界全体の窮状を訴え、生産者はスーパーなどに対し納入価格の引き上げを求め続けてきた。世情を鑑みて応じてくれた小売業者も一部あるが、全体的にガードは固いという。
あるモヤシ生産業者は、
「大手スーパーに納入価格を上げてほしいとお願いしたところ、『うちで扱っている別の業者からは値上げの話は
来てないよ』と返されました。それなら取引をやめるよ、という言葉にも聞こえました。スーパーの姿勢にも
問題は感じますが、『モヤシは安いのが当たり前』との消費者意識が強すぎて、それが価格を上げられない原因に
なっているようです。スーパーも過当競争で、客離れが怖いですからね」と実情を話す。