ジェレミー・デシルヴァ著『直立二足歩行の人類史』を読む:ゴキブリ二足走行の謎と教訓
https://honz.jp/articles/-/52134

「人間を生き残らせた出来の悪い足」という副題と、次の瞬間にはネコ科大型獣の餌食になるという惨劇を予想させる表紙カバーの絵に興味を引かれて、ふと手に取った本でした。
序論と第一章では、二足歩行に対するわれわれの思い入れの強さが指摘されていて、ぐっと内容に引き込まれました。
ところが54ページまで読み進めたところで、重大な問題にぶつかってしまったのです。そこにはこう書いてありました。

“キリストトカゲにせよヴェロキラプトルにせよ、二足歩行の利点とは要はスピードだと思われる。ゴキブリでさえ、非常時には二本足で立ち上がって全速力で走る。”
「ちょっと待て!」とわたしは思いました。ゴキブリは短距離ならば飛びもするし、普通でさえ、かなりのスピードでササササと走りまわりますよね。
そこからさらに速度を上げるために、よりによって二本足で立ち上がって走ると!? いやいや、それはありえないでしょう。

第一に、ゴキブリのあの体を後脚二本で支えられるとは思えません。第二に、立ち上がって走り出そうものなら、あの薄っぺらい体にそなわる流体力学的メリット[風圧が小さくてすむ]は失われ、
ゴキブリは前方からの強い風圧を受けて後ろにひっくり返ってしまうでしょう。ゴキブリの二足走行なんて、流体力学的にもありえない!!

つづく